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ワンダーウーマン 1984のしおえもんGoGoのレビュー・感想・評価

ワンダーウーマン 1984(2020年製作の映画)
3.2
何か不思議な映画。
色んな「?」があるけれど、何か見てられるのはガル・ガドットの魅力に寄るものだろうか。

一番不思議な感触を与えてるのが、ダイアナのキャラクターだ。
超絶美人で、超スタイリッシュで、すっごいモテモテ。必然的に自信に満ち溢れているし、雲霞の如く寄ってくる男どもをサラっとスルー。もう見るからに「デキる女、モテる女」。一歩間違えたらお高く止まった嫌な女になりそうなところを、有無を言わせぬ美貌でねじ伏せてるかのようだ。

一般に女性の主人公の場合、コミュ力高めに設定されてることが多いように思う。ガールパワーみたいな女の団結が強調される事が多く、必然的に女同士の友情は手厚く描かれる傾向があるだろう。
ところがダイアナはそうではない。

特にバーバラ、スティーブと共に祈祷師?みたいな人を訪問したシーンでバーバラをガン無視してスティーブとだけ会話するダイアナに、願いを叶える石の代償でバーバラがダイアナから見えなくなったパターンかと思ったほどだ。
序盤でランチしてたの何だったの?地味なクラスメイトがコンタクトに変えて男子にモテ始めたら急に「あの子最近調子乗ってるよね」とか言って冷たくなる上のカーストの子を見るようで震え上がった。調べ物を頼むときも笑顔一つ無いし。
こっわ。

ダイアナがバーバラに「元の優しかったあなたはどこへ行ったの」とか言ってたけど、もしかするとその感じは「ダイアナみたいになりたい」で実現した部分じゃないのかとさえ思う。
またモテるバーバラは別に他人に対して特に冷たくなったようにも見えなかった。

最初はスティーブを失い、不老不死で多くの人の死を見届けて来た虚無感から人との交流を疎んでいるのかと思ったが、モテるようになったバーバラへの塩対応を見ていると、ダイアナには救うべき弱い人、戦うべき敵、スティーブの3種類の人間しか眼中に無いのかもしれない。

しかしこのダイアナのチャーミングさと裏腹のいけ好かない感じが、ある意味では「人間じゃない感」のようにも見えるし、また今までの「女といえばみんなに優しくてコミュ力高くて、協調性が高い」というキャラ設定に抵抗するかのようで、そのゴーイングマイウェイな所が彼女の魅力なようにも欠点なようにも見えてくるし、この映画の痛快さというか潔さにもつながっているように見える。
「皆が好きな女キャラは要らんのじゃ!」「男にだけニコニコして何が悪いねん」ってことかな。

DCシリーズはスーパーマンもどこかズレていて、人間であるバットマンと噛み合ってなかったように記憶しているが、ワンダーウーマンも女性キャラの定石を外した、人間社会から見たら割といけ好かないような描き方から人間と外れている感じを出しているのだとすると興味深いキャラ設定だなと思った。

以下ネタバレあります。



一方ストーリーとしては、「何でも願いを叶える石」を巡る人間の欲深さや善良さへの信頼を描くのはベタな話で、一方で「相手に無理やり願わせることで代償として自分の願いを叶えるというやり口はなかなか良かったが、全体的にちょっと雑な印象を受ける。

例えば世界中の人とつながることで皆の願いを吸い寄せるのがだいぶ意味不明。
願いの中には相反するものもあれば不可能なこともあるはずで、単純に「無理じゃない?」って思っちゃう。

また「この世界はありのままで美しい」というものの、時代は冷戦真っ最中。
願いによってアラブのどこかで古の領土の回復を願ったら地中から壁が出現するシーンなんか、まさに今の中東情勢を思うと刺さりすぎる描写だっただけに、「世界がありのままで美しい」という言葉がうすら寒く感じてしまったのは時代が悪かったのかもしれない。(後で調べたらガル・ガドットはイスラエルの女優さんで、あのシーンはどういう気持ちだったのだろうか)
人間の願いは必ずしも欲深い事だけではないだろうし、「世界平和」とか「核兵器廃絶」とか「自然環境保護」とか願ってた人もいるのではないだろうか。
まあこの後冷戦終結に向かう事を思えば、安直に魔法に頼らず人間一人一人の努力で平和になれたのだということかもしれないけど。

ドラマパートでは世界の安寧とスティーブの究極の二択の葛藤が良かったし、最後の別れのシーンをはっきりとは見せずにダイアナが走り去り、力を取り戻す形でスティーブが消えたことを示すのもいい。その悲しみから力を爆発させて飛行能力を身につけ、スティーブの事を思い出しながら飛び方を学ぶのもグッとくる。

また第一作で初めて島を出たダイアナがロンドンでキョロキョロしてるのと、今回スティーブが進歩した世界にキョロキョロする対比がやっぱりチャーミングだった。

ほんと、スティーブ絡みだったらダイアナは可愛いのだ。


その他
・マックス・ロードが願いをとりつける強引さがちょっとした笑いになっていて良かった
・ワンダーウーマンは誰かを助けるたびに「内緒ね」と言い続けているが、目立ち過ぎてちゃう?ショッピングセンターであれだけ大立ち回りして「内緒」は無理よ
・あの序盤の競技会は、石に願うという安直な方法で願いを叶えても価値は無いんだよという事が言いたかったのかもしれないけど尺が長すぎる。しかし映像とアクションはとても良かった。あとあの子役がスタントを使わず全て自分で演じたらしいと知って驚いた。
・前作は大事そうな剣、今作は金ぴかの伝説の鎧。でもいずれもあっさり壊れるし、もう二度と出てこないだろう。金ぴかの鎧の方がダサいってどういう事?普段の衣装の方がはるかにクールだ。
・ダイアナがスタイリッシュすぎるだけに、飛んでる時のスーパーマンポーズがめちゃくちゃダサい。あと腕で弾丸を弾くのも割とダサい。
・ダイアナがスタイリッシュすぎるけど、80年代のToo Muchなファッション着せて見て欲しかった
・相変わらずワンダーウーマンのテーマソングはめちゃくちゃアガる
・結局バーバラはどうなったのだろうか。彼女が花開いたのはメイクとファッションと自信を持てたからでは無いか。このままだと単なるルッキズムで終わりそうなので、彼女が自分自身にもいいところが一杯あることに気付いたり、引っ込み思案を変えようと一歩踏み出すとか、そういうシーンが入っても良かったのに。つくづくバーバラの扱いが気の毒過ぎる。
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