ろ

父親たちの星条旗のろのレビュー・感想・評価

父親たちの星条旗(2006年製作の映画)
3.7
「彼らを心から称えたいなら、ありのままの姿を記録しよう。父がそうしたように…」

衛生兵のジョン。彼は1枚の写真により、一躍有名になる。
しかし、彼は戦争について語ることはなかった。
そんな彼が戦った硫黄島の戦いの真実に、息子ジェームズが迫る。

「あの旗の写真は勝利を象徴していた。人々が待ち望んだ勝利を…」
アメリカは硫黄島の戦いに勝った。
しかし、犠牲はつきもの。
戦闘シーンを観ていると『プライベートライアン』の冒頭が頭をよぎります。
「こりゃあ、ひどい戦いだな。大虐殺だ」
そう言った次の瞬間、味方が殺され首がもげている。
戦車に引かれた兵士。
波に打ち上げられた死体がそこら中に転がっている。
爆発のたびに土砂の雨が降り注ぐ。
銃口だけが見えて不気味な日本兵。

硫黄島から帰ってきたジョン、レイニー、アイラ。
彼らを迎えたのは戦場を知らない民衆と官僚とマスコミ。
「戦場は大変だったらしいな~。ニュースで見たよ」
のんきな政治家に腹が立ちます。
そして、戦地から帰った3人は戦費を集めるためのキャンペーンに使われる。
観ていて複雑な気持ちになりました。

戦場を知らないからこそ、帰ってきた兵士を英雄だと言う。
「真の英雄は生還できなかった兵士たち。硫黄島や他の戦場で死んだ者たちです」
「弾をよけていただけなのに英雄扱いされるのは嫌だった。戦場で見たりやったりしたことは誇れるようなことじゃないです」
「戦争で行われているのは信じがたいほど残虐な行為だ」

旗を立てるところを再現するために、山の模型に登る場面。
硫黄島での体験がフラッシュバックします。
”衛生兵!”と呼ばれた気がした。
花火の音が銃声に聞こえる。
味方が倒れていく様子が見える。
それでも前に進まなければならない...。

死んでいった兵士は称えられることもなく、生き残った者は仲間の死を悲しむ時間も余裕もない。
なんとも言えない気持ちになります。

「父と仲間たちが危険を冒し、傷を負ったのは戦友のため。
国のために戦っても死ぬのは仲間のため、共に戦う男たちのためだ」
ろ