自分が観てきたイーストウッド作品から考えられる彼の作風は“やりきれなさ”ではないだろうか。これを観てそれに気づいた時、他の作品で自分が思った胸糞悪さ、というのを自力で落とし込むことができた。つまり胸糞悪いと思っていても名作なんじゃないかってこと。
彼の作品はどこに持って行けば良いか分からないズシンとした気持ちが自分の心の中に深く沈殿する。最新作のアメリカン・スナイパーもそうだし、グラン・トリノやミリオンダラー・ベイビーもそうだ。勧善懲悪ではない、ということ。
今作もどうしたもんかなぁという落とし所が分からない思いが湧く。
はっきり言って気持ち良さはないし、誰々がああなれば…という悔いばかりだ。
そうまでして伝えたい思いは何なのか?これがまた難しい。ただ正しい事をするべき、なんて簡単な反面教師みたいな事ではないからだ。
人によって捉えようは様々であり、本人がそれが正しいと思ったことは正しい。
本作でもみんながみんな、正しいと自分で思ったことをしている。
3人の男の数奇な運命。
彼が80を超えてさえも映画を作り続ける意欲がどこから沸いているか、ようやく分かった気がする。
長い人生を過ごした彼だからこそ描けるシンプルな事。
運命というのは選択の連続であり、それによる結果は自分しか背負えない事。
或いは当人たちにしか理解し得ない絆があり、それは普通の常識では測れない事。
今作であれば主人公が犯した罪というのは川に浮かべることしかできない。流れても流れても同じ場所に行き着く。
仕方ないも、救いがないというのも、越えた先を提示し続ける監督の力に脱帽。
ほんとすげえなこの監督は。