群青

ザ・フラッシュの群青のレビュー・感想・評価

ザ・フラッシュ(2023年製作の映画)
3.6
2023年劇場鑑賞7作目。
吹替で。


前評判はDCシリーズでもピカイチだった。トム・クルーズが見終わったあと、関係者に電話して褒め称えたというエピソードが報道されたからだ。

DCユニバースの調子が悪く、ジェームズ・ガンによって再編の宣言がなされた後も今作の修正は抜本的にはされなかったみたい(正確にはラストのオチが何回か変更になったくらい)だし、主演のエズラ・ミラーが暴行事件を起こししかも一度目の報道後さらに事件が発覚した後にも公開延期や中止にはならなかった。
ドラマ版バットガールが公開前にお蔵入りになったのにも関わらずだ。

上記の経緯を踏まえるといかに今作が高評価を期待されていたか想像に難くない。
そこにトムのエピソード。そりゃ否が応でもハードルは上がるってもんだ。

奇しくも日本では同じマルチバースを題材にしたスパイダーマン アクロス・ザ・スパイダーバースと公開時期が重なった。
いい比較になりましたね。


観てまず思ったのはハッピー・デス・デイ2と同じじゃん!という感想。ネタバレになるからここまでにしておくけど笑

愛する母を失って父も冤罪でほぼ有罪確定。なんとかできないかとたどり着いたのが過去改変。ブルースに警告されていたものの、喉から手が出るほど欲しい幸せを掴み直すために軽い気持ちでやってみたら、なんと未来までも変化してしまう。

歴史の改変ではよくあるフックなんだけど新鮮なのはフラッシュというキャラとティム・バートン版のバットマンを出します!という展開が用意されているからだ。

フラッシュは近年ドラマではシーズンを重ねていたが銀幕では機会がなかった。
エズラ・ミラーという危うい繊細さ(実際事件を起こしてしまうのだけれど)にフラッシュことバリーにはピッタリだった。
個人的にもピーター・パーカーとは異なるティーンエイジ感がでていて差別化できていたし非常に良かった。

なんせ冒頭のつかみが良い。ブルースは敵を追うからフラッシュは崩れ落ちる病院から人助けをしてくれ、と執事アルフレッドから頼まれる。
本当は悪党退治がしたいのに、とか言いながら頑張るフラッシュ笑
でも敵を追うのはどっちもできるけど救助は彼しかできない。スーパーマンに至っては火山噴火を止めてるのでこちらもスーパーマンしかできない笑
適材適所という至極真っ当なアルフレッドの意見に納得するしかないフラッシュ笑

でもここからがいい。超光速の救助。
ちょっと前にXMENのクイックシルバーで同じようなやつを観た気がするのは置いておいて笑
やっぱり限られた時間で早くしないと!という展開は何回観ても気持ちいい。
ずるいのは赤ちゃんを使うこと。ずるいって!絶対助けて!になるじゃん!笑
しかも複数いて、落ちたら即死なのに落ちる前にそれぞれ違う原因で死んでしまいますよ、という丁寧な演出も重ねる。
頑張れ!フラッシュ!笑

つかみが良ければあとは乗るだけ。あれよあれよのうちに元の未来に帰れなくなるフラッシュ。BTTFみたいな展開なんだけど、しっかりBTTFの主演が最初は違っていた、というネタをメタ的にネタにする。知ってる人しか知らねえよ!笑

未来が変わってしまったということでここでようやくマイケル・キートンのブルースが登場。ダークナイトの時とはまた違う引退状態。
というか30年前の設備、よく復旧できたなフラッシュ笑

そこから変わってしまった世界線のスーパーマンを探すんだけどこの世界線のスーパーガールがこれまたとてつもなく魅力的。
女優の名前はサッシャ・カジェ。覚えておきましょう。素晴らしい女優になると思う。


ここからの展開はネタバレになるからあまり言えないが、ありふれた展開っちゃあ展開なんだけどその展開にするためにスーパーガールとバットマンの扱いが軽くなってしまい、ちょっとショックだった。軽いと思うくらいそこに至るまでの流れが急すぎたし、急だと思うくらい納得させるための演出が少なすぎた。マジでサッシャ・カジェのスーパーガールが勿体無い。

しかもありふれた展開を描くにはちょっと過剰なファンサービスだった。
あの時代のあの人、その時代のその人。
マルチバースがあそこにもここにもたくさんある!というのを見せるためだけのファンサービス。嬉しいけど少し胃もたれ笑

というか知らない人には全くピンとこない。なんとなくわかるけど…となる。
こういうファンサービスは見せ方が上手くないと完全に知ってる側だけへの配慮になってしまう。
今作のそれは、知ってる側へちょっと寄りすぎだと思う。
要は観客を置いてけぼりにしてしまっている。

そのせいで、フラッシュが最終的に行う究極の選択、ということの重さやエモーショナルを阻害してしまっている。
確かに感動するし泣けるんだけど、直前が盛りすぎてしまったためそのエモーショナルに乗り切れなくなってしまっている感が否めない。
しかもハッピー・デス・デイ2と全く同じため、既視感がある。

あんだけハードルをあげたんだから、そこは超えて欲しかった。

オチもバットマン観たことがない人でもあってなるけど、やっぱり知ってる人だけがニヤッとできる構造。
ちょっとマルチバースだからってやり過ぎ感だと思った。

そもそもマルチバースという構造自体が反則なのである。今までの作品のあの人があの役でカムバック!なんて方法はそれを観た人だけが楽しめる構造だ。
やりすぎるとなんでもありになるし、過剰なファンサービスに受け止められる。

そういう意味では今作はギリギリアウトのような気がするけど、今後DCユニバースが再編成される、という展開にするためには必要不可欠でもあるため、大人の事情を含めるとマジでギリギリ。関係ないけど三笘の1mm並にギリギリセーフなのか笑
でもこの再編もやっぱり知らない人からすると関係なくね?となる。
マルチバース難しい!笑

公開時期が重なっていただけに、どうしても比較してしまうだろうアクロス・ザ・スパイダーバースの方がマルチバースをうまく調理していたし、語られるテーマやストーリーもそこから何歩も先を示していただけに本当に惜しい。

面白かっただけに惜しい。


あと、個人的な好みの問題なんだけど、フラッシュのコスチューム、ジャスティス・リーグ時の宇宙服の改造っていう解釈とデザイン自体がカッコ良すぎたので今作の指輪からスルッと出てきてスルッと被れるのが、残念だった。原作がそうなんだろうけどね。

あ、そうだもう1点あった。CGが雑すぎる…時間がなかったのかお金がなかったのか。キャラの性質上CGを使いまくる作品なのにそのCGが雑だとノイズになる。
最近、MARVELの作品も露骨に雑になってるし、CGクリエイターから短納期、安い単価、修正指示が多すぎて過重労働になってしまっていることが問題化しているのも関係あるような。

利益追求だけでなくてちゃんとそこら辺きっちりしないとどんどん雑になる。
だから今ストが起きてんだよ、と思った。
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