しゅん

ミスティック・リバーのしゅんのレビュー・感想・評価

ミスティック・リバー(2003年製作の映画)
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観終わった後にまず感じたのは「こんな映画を撮ってしまったらもう映画を撮れなくなるんじゃないか?」ということだった。実際にはイーストウッドはこの後もたくさんの映画を撮っているのだが、そう思ってしまうくらいの充実と緊張。
暗めに統一された映像も、表玄関や車の塗装の剥げ方も、生きながら死んでいる男三人の表情も、すべてが途方も無いやるせなさを呼び起こす。記憶と生活の軋みに耐え続けなくてはいけないしんどさ、人間が壊れてゆく様子を黙ってみるしかない無力感。それを麗しい音楽とたおやかな川の流れで包み込んでしまうイーストウッドはやはりどこか狂っているのではないか。あるいは、世界の暗部をためらいもなく直視できるくらい異常に正気なのだろうか。しばらくこの映画のことが頭から離れなそう。
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