よしまる

ジェーン・エアのよしまるのレビュー・感想・評価

ジェーン・エア(1944年製作の映画)
3.2
 何度も映画化されているのに何故かひとつも観たことない作品ってのが結構あって。

 実は「ロミオとジュリエット」も「大いなる遺産」も、どれも観たことがない。自分でも驚くw

 なんとなく内容は知っている「ジェーンエア」。最も有名な1943年版は、メリーポピンズなどディズニー映画を多数手がけるロバートスティーブンソン監督により製作された。

 ところがどうもオーソンウェルズの剛腕ぶりが発揮されているようで、ほとんど主役兼監督のような状況だったのではないかといくつかの評に書かれている。
 そしてヒロインのジェーンエアを演じるのは、ヒッチコック作品の「レベッカ」で当たり「断崖」でオスカーを獲ったジョーンフォンテイン。

 原作が衝撃を持って迎えられたのは今から170年も前、日本に黒船が来るよりも以前の話。
 なにしろ男女平等、自由恋愛があり得ない世の中っていうのが実際に存在していたのだから、既成の枠に囚われない自立した女性を描いた小説がいかに革新的だったかわかるというもの。この映画はその100年後、第二次大戦中に製作・公開されている。

 ジェーンエアの少女時代を演じたペギーアンガーナーは驚異的に素晴らしい。そして親友のヘレンはなんとエリザベステイラー、これまた存在感抜群。

 言ってしまうとなんなのだけれど、この子役たちがすごすぎて、その先の大人になってからがまあまあ退屈😅
 それはオーソンウェルズの現在ではちょっと受けつけがたいヤンデレっぷりと、ジョーンフォンテインの美しくも上品な佇まいが、残念ながら噛み合って来ない。
 お互いに数奇な運命を抱えて、許されざる恋愛を目前にしては成し遂げられずに離れていくという繰り返しのようなことを、なかなかにしつこく見せられる。

 あくまでボクの想像だけれど、この物語は男がもっとイケメンなシャイ野郎で、女がいまいち美人でなくて蓮っ葉な感じのほうがうまく成立するのではないかと思った。オーソンウェルズのようなナルシストが「俺みたいな男についてくるな」と言っても、ジョーンフォンテインのような美女が「やっぱりあなたしかいない」と言っても、どこか嘘くさくなってしまうような…。

 かなり分厚い小説を一本の映画にうまくまとめ上げていることも、モノクロならではのしっとりとして情念を感じさせる映像もレベルは水準以上の秀作なのだけれど、なんとなく乗り切れないのはキャスティングが自分好みでないからだけなのかどうか。
 他にもたくさん作られているこの作品、マイケルファスペンダー版やジョージCスコット版も観てみたいが、ティモシーダルトン版ってのが気になって仕方ないw