秋日和

白い町での秋日和のレビュー・感想・評価

白い町で(1983年製作の映画)
4.0
この映画には、ありとあらゆる逆転現象が起こる。最も分かり易い例として挙げられるのは、バーに掛けてある「文字盤が逆に並べられた時計」だろうか。その時計を見ながら語られる男女の会話の内容を考えてみても、本作は「逆」ということに対して敏感なように思われる。
逆転現象はブルーノ・ガンツの着る服とリスボンで出逢った女の着る服の色にも生じる。しばしば彼らの服の色は白→青、青→白といったように逆転するのだけれど、二人が同じ色の服をペアルックのように着るシーンはあるシーンを除いて存在しない。また、ビリヤード場での出逢い(そんな良いものじゃないけど)から起こる追う/追いかける立場の逆転なんかも面白かった。逆転現象の連鎖が確実に映画を面白くしている。
中には、少し寂しい逆転現象も起こっている。寂しいけれど、ボーイ・ミーツ・ガール(と、いうには年を取りすぎているか……)映画の決着の付け方としては正しいと思うし、逆転の末に元通りになったあの状況を考えると、なかなか良いエンディングだったんじゃないかなとも思う。
以前観た『ローズヒルの女』がかなり自分に合わなかったせいでタネールを敬遠していたのだけど、この映画は結構しっくりきた(ちょっとヴェンダースっぽかったから?)。退屈な部分もあるけれど、路面電車が走るリスボンの街並みは素晴らしいし、ナイトシーンで耳にするハーモニカの音色は心地良い。それは否定できない。もう後二、三本だけこの監督の作品を観てみようかな。
秋日和

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