秋日和さんの映画レビュー・感想・評価

秋日和

秋日和

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一晩中(1982年製作の映画)

5.0

このレビューはネタバレを含みます

いくつもの好きなシーンがあった。例えば、電話を掛けようかどうしようかと部屋をウロウロするところ、ダイヤルを回して相手に繋がってもすぐに受話器を置いてしまうところ。誰かを待っているのか、家の外で行ったり>>続きを読む

聖なる酔っぱらいの伝説(1988年製作の映画)

4.0

レストランの灯りが消える瞬間に何回も立ち会うのは、ルドガー・ハウアーが閉店までお店に居続けたから。どうしてそんなことをするのかは、橋の下で夜を明かす彼の姿を見れば明らかで、だからこの映画で灯りが消える>>続きを読む

デスプルーフ in グラインドハウス(2007年製作の映画)

5.0

ゾーイ・ベルが片脚だけを車中に残して身を乗り出し、もう片方の脚でドアを蹴る。それを発車の合図として、ボロボロになった車は息を吹き返して走り出す。それまで複数の視線が絡み合いながら進んでいた映画は、一対>>続きを読む

(ハル)(1996年製作の映画)

4.0

ガラス越しと画面越しとレンズ越しのすれ違い。
パソコン通信上での会話が画面に映し出されて、観客はただそれを読む。文章を読み上げるナレーションがないのは、多分、ナレーションにはどうしても声の表情が乗っか
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冷たい水(1994年製作の映画)

4.0

タイトルに反して印象に残っているのは、冷えきった彼らを過剰なまでに温める火。ダイナマイトの導線につけられた火は勿論のこと、パーティーの中で燃え上がる炎や、極寒の中でかじかむ手によってつけられた煙草の火>>続きを読む

冬時間のパリ(2018年製作の映画)

3.5

原題の『Doubles vies』に対してつけられた英題は『non-fiction』。とある小説の左の頁と右の頁に描かれていた一組の男女の人生が、本を閉じてピタリと重ね合わったような、そんなイメージが>>続きを読む

ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド(2019年製作の映画)

4.5

何かしらの役を演じているときは、そのキャラクターにあったサングラスや靴を身に纏うけれど、役の外では誰だって自由なのだという、当たり前の事実を眺めていた。暗闇のなかでスクリーンを見つめるときにサングラス>>続きを読む

(1982年製作の映画)

4.0

規則正しく並べられたボーリングのピンとピンの間からこっそりと世界を覗くように、イザベル・ユペールは父親と叔父の企みを盗み見る。幾度も繰り返されてきた小屋での行ないに、彼女は憎悪を膨らませる。
この映画
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元祖大四畳半大物語(1980年製作の映画)

3.5

デジタルが広まり、映画の中に暗闇が無くなりつつあると、とある監督が数年前に発言していたことがなんとなく頭に残っていて、この映画を観てはっきりと思い出した。本作にはハッキリと、豊かな暗闇が存在していると>>続きを読む

7月の物語(2017年製作の映画)

4.0

映画の中に、登場人物の戸惑いや迷いを感じるとときめいてしまう。例えば『未来よ、こんにちは』で忌まわしき花をゴミ箱に捨てるときのイザベル・ユペール。例えば『カンウォンドの恋』で部屋を抜け出す際の、一瞬の>>続きを読む

運び屋(2018年製作の映画)

3.5

イーストウッドの姿を新作映画で目撃するのは、たぶん『人生の特等席』以来だから、随分と久し振りの再会だった。多くの映画ファンが知っている通り、この人は自分自身を劇中で度々痛め付けてきているのだけど、本作>>続きを読む

突撃!O・Cとスティッグス/お笑い黙示録(1985年製作の映画)

4.5

人や花火やお酒が乱れに乱れていくことを許すこの映画の中で、アルトマンは唯一、色彩が乱れることを許さない。
例えば家族で囲む食卓のシーン。部屋のなかに不自然なまでに配置された緑の数々(子供が昔描いたと思
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草の葉(2018年製作の映画)

3.5

今後はズームじゃなくてピントで遊ぶ監督になっていくの?と、本作と『川沿いのホテル』を観て、まず思った。
見ず知らずの他人の酒の席に招かれる居心地の悪さといったらない。それがお店で隣の席になっただけの縁
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A GHOST STORY ア・ゴースト・ストーリー(2017年製作の映画)

5.0

住んでいた家を離れる際、その家のペンキを塗り直す文化がアメリカにはあるらしい、ということを『6才の僕が、大人になるまで。』を観て知った。大袈裟に言うなら、誰かが家に住んでいた期間はその人たちにとっての>>続きを読む

川沿いのホテル(2018年製作の映画)

4.0

水をあげないと草木は枯れてしまうけれど、あげすぎても枯れてしまう、ということだと思った。ホン・サンスにとっての水はやっぱり酒で、今回も挨拶みたいな乾杯が何度も聞こえてくる。ホン・サンスの描く酒の席は相>>続きを読む

きみの鳥はうたえる(2018年製作の映画)

4.0

青白い暗闇の中で、冷たい氷をそっと噛む。冷蔵庫の扉はちゃんと閉めず、いつも少しだけ開いているから、今月も電気代がかかってしまう。人から借りたライターをこっそり胸ポケットに入れているのはバレバレだけど、>>続きを読む

寝ても覚めても(2018年製作の映画)

4.0

バイクから放り出された、地面に横たわる二人。そして、長い長い運転を終えた東出昌大が、帰宅したとたんにリビングの床に横たわる。唐田えりかは、その上から身体を重ねるように横たわる。猫みたいに。
この映画で
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正しい日 間違えた日(2015年製作の映画)

4.0

もしも自分が単なる「絵を描く人」だったとして、突然見知らぬ男に声をかけられたらどうだろうか。その男がどうやら名前だけ聞いたことのある有名な映画監督だったらどうだろうか。握手のために手を差し出されたらど>>続きを読む

ファントム・スレッド(2017年製作の映画)

4.5

ある女性に翻弄された中年男がやがてその身を滅ぼしてゆく、というノワール的な映画が好きで、更には屋敷の内側から外部の人間の手によってじわじわと支配されていく映画も好きなのだから、やっぱり『ファントム・ス>>続きを読む

万引き家族(2018年製作の映画)

3.5

名前を二つ持っている人たちが鏡の前で自問自答する。そんな映画がこの世に一体何本あるというのだろうか。バスの窓ガラスに映るリリー・フランキーに至るまで、なんて古典的なことをやってのけているのかと思ってし>>続きを読む

それから(2017年製作の映画)

4.0

沈黙に弱い人間というのが世の中には沢山いて、ホン・サンスはそういう人がどんな行為をするかだなんて当然のことながら分かっている。
妻に真正面から浮気を問われたとき、男の口から言葉はでない。最初の一言二言
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身をかわして(2003年製作の映画)

4.0

女の子に告白をしたらすぐにでも返事が欲しいのは分かるけど、「返事は家に帰って電話でするわ」と答える彼女に「いま返事くれよ。電話代が……」だなんて口を滑らすのは絶対に駄目。幼馴染みのあの子と二人っきりで>>続きを読む

泳ぎすぎた夜(2017年製作の映画)

3.5

もしも自分が6歳の男の子だったなら、たとえ夜中にポテトチップスが食べたくなったとしても、あんな風に一階まで降りていく勇気はなかったと思う。仮に自分がその作戦を実行したとしても、棚の高い場所にしまってあ>>続きを読む

愛されちゃって、マフィア(1988年製作の映画)

4.5

「ピカピカ」のカッコいい自分になりたいのなら、喩えキッチンに浴槽のあるヘンテコな部屋に住むハメになったとしても、職場の覗き魔上司に目掛けてミルクシェークをぶっかけるくらいの気持ちで生きていかなくちゃい>>続きを読む

15時17分、パリ行き(2018年製作の映画)

4.5

少し汚い言葉を吐いただけで、すぐに校長室へ行かなければいけない三人の悪ガキたち。「Nice to meet you,ass hole.」なんて素敵な挨拶は、頭のお堅い奴らの耳には届かない。その部屋の扉>>続きを読む

三月生れ(1958年製作の映画)

4.5

「一生物よ」という言葉と共に渡されたネグリジェはいつしかパジャマへと変わり、ダブルベッドは二つのシングルベッドとして間を引き裂かれる。あの頃と今は違う。けれど、25年分の喧嘩をたった数週間で果たしてし>>続きを読む

ナタリー・グランジェ(女の館)(1972年製作の映画)

3.5

ジャンヌ・モローの吸う煙草の灰がじりじりと伸びていく様は、ジェラール・ドパルデューがどれ程の時間をその場所で過ごしたのかを気づかせてくれる、時計のようなものだった。
ナタリーと名付けられた少女が乳母車
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勝手にふるえてろ(2017年製作の映画)

4.0

自分の持っている思い出と自分の好きな人の思い出を近づけて、それがもしも割符みたいにピッタリくっついたら嬉しいだろう。好きな人に名前を忘れられていたら悲しいだろう(けれど名前を忘れてしまっているのはブー>>続きを読む

ジャングルの掟(2016年製作の映画)

4.0

ヘリコプターが巨大な像を運んでくるだなんて、なんて挑戦的な監督なの?と思わずにはいられない。だから、不味そうな機内食を後ろの座席にポイッと放り投げるシーンで思わず笑ってしまっても、決して油断なんてでき>>続きを読む

血煙高田の馬場(1937年製作の映画)

4.0

ラストへと向かって駆け抜けていく韋駄天走りも、舞うように斬っていく様も、もっとずっと眺めていたい気持ちになる。マキノが引き連れてくる群衆に毎回わくわくさせられるのは(群衆を撮る、という想いが先にあるか>>続きを読む

夜の浜辺でひとり(2016年製作の映画)

3.5

一人ぼっちの映画なのだから、一人ぼっちでいるところだけを映せば良いというわけでは勿論ない。誰がどこにいて、どんな状況にいるのかを濃やかに切り取ってきたホン・サンスは、「一人ぼっちの捉え方」を誰よりも知>>続きを読む

パターソン(2016年製作の映画)

4.5

レインコートを着ながら、ひたすらシャワーを浴びる時間。
喩え毎日が同じことの繰り返しだと思えたとしても、決して同じではないんだぜと、ジャームッシュが囁いているかのようだった。それは丁度、外見上では同じ
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飛行士の妻(1980年製作の映画)

4.5

彼女が金魚鉢に餌を落とすと、鉢の中に雪が降る。彼がスノードームを手に取ると、ドームの中に雪が降る。同じ時間に同じ場所で、けれど別のカットで行われる二つの降雪。なんでもない手持ち無沙汰の時間だって、ロメ>>続きを読む

僕は戦争花嫁(1949年製作の映画)

5.0

新婚夫婦がいつまでたっても同じベッドで寝ることを許されない、いつだって何らかの邪魔が入る……映画のラストでは達成されるに決まってるその目的。寧ろ、引き延ばされれば引き延ばされるほど、後に味わう幸福が大>>続きを読む

この世界の片隅に(2016年製作の映画)

3.5

風呂敷に包まれた荷物を壁に押し付けて固定し、身体の前に垂れ下がった布をきゅっと縛って、主人公・すずはそれを背負う……映画の冒頭に用意されたこの何気ないシーンは、別に何かの伏線になっているわけではない。>>続きを読む

皆さま、ごきげんよう(2015年製作の映画)

4.0

生きていれば必ず、名前も知らない誰かが自分の視界にフレームインして、そして直ぐ様フレームアウトする(ときにはローラースケートを履いていたりする)……と、まとめてしまえば綺麗に収まる気がする。けれど実際>>続きを読む