秋日和

四畳半タイムマシンブルースの秋日和のレビュー・感想・評価

4.0
あの端正な横顔と歩き方にまた出会えて嬉しい。明石さんのスニーカーがアップになるだけで嬉しい。もうとっくに空になったラムネを瓶を傾ける度に、カランと音がするのも嬉しい。そのあとにつられて風鈴が鳴るのも嬉しい。

この映画の明石さんは矢鱈と頭をどこかにもたせかけていて、その動作がなんだか涼しげで良かった。一方で「わたし」は暑いというのに、リブつきのパンツを穿いていて、「お前絶対一年中同じパンツ穿いてるだろ」という感じも良かった。この作品のキャラクターは誰だって愛せる。小津さえも。

話自体の流れや辻褄の部分はさほど重要ではなくて、感じなのはあそこで描かれているのが古本市であり大学生の日常であり下鴨であり夏であるということ。鴨川デルタを正しく使う映画は勿論愛せる。なんであっても。

「わたし」がなけなしの勇気を振り絞って明石さんに話し掛けるとき、懐かしい気持ちで応援した。思えば『四畳半神話大系』で明石さんと「わたし」は川を挟んだ位置関係からのスタートであって、同じ岸にいるだけで頑張ってきたよなぁと思ってしまう。だからこの映画をあまり一本の作品としてちゃんと見られないのだけど、モリミーの作品はいつだってどこか自分の懐かしさを引っ張り出させられるところがあるので、まぁこれも仕方ないかと思う。
秋日和

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