秋日和

愛なのにの秋日和のレビュー・感想・評価

愛なのに(2021年製作の映画)
3.5
古本屋で働く瀬戸康史に、女子高生が手紙を渡す。何度も渡す。何度も渡した挙げ句、彼女から返事を書いてほしいと言われる。瀬戸康史は、彼女に返事を書こうとする。まず、彼女の名前を書く。そのときにハッとする。そうか、彼女の名前を漢字フルネームで知っていたのか。当たり前だ。彼女からの手紙に書いてあるに決まっている。けれど、たったそれだけの事実で映画に描かれていない時間の存在を知る。

あらすじを切り取ると、この映画は結構居心地が悪い筋書き。脚本家の手癖だと思う。すんでのところで不快感を覚えなかったのは、たぶん城定監督の明るさ(サッパリした部分)のお陰と思う。『桃木屋旅館騒動記』『新宿パンチ』『18倫』。城定監督にはテーマとは別の場所で明るさを感じる。

明るさの他に思うのは、馬鹿馬鹿しさ。浮気した中島歩の情けない言い訳。怒って家を出ていった妻が帰宅したときにのんきに食べていたカップ焼きそばと缶ビールのだらしなさ。あれ、絶対口の周りの青のりバレてる。

あらすじの薄気味の悪さが、城定監督のよって塗り替えられる。流石だと思う。今泉力哉の処方箋をもらった感じ。

……それにしても中島歩はよいなぁ。『グッド・ストライプス』『偶然と想像』を足して2で割った感じ素晴らしい。
秋日和

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