シズヲ

エルダー兄弟のシズヲのレビュー・感想・評価

エルダー兄弟(1965年製作の映画)
3.7
母親の葬式をきっかけに再び顔を会わせた四人兄弟の物語。還暦間近のジョン・ウェインが長男で18歳の青年が末っ子の兄弟ってのは流石に無理がある気がしないでもないが、何だかんだ兄弟の交流が憎めないので結局受け入れてしまう。デュークは当時肺癌の治療を終えてスクリーンに復帰した直後だったらしいけど、本作ではそんなことを感じさせない程に生き生きと逞しい姿を見せているので安心感がある。

デュークとディーン・マーティンのコンビに加え、男達の連帯関係や横暴な豪族との対立などヘンリー・ハサウェイ版『リオ・ブラボー』と言うべき雰囲気がある。時に反目し合うこともあれど確かな家族愛を持った四兄弟の掛け合いは清々しいし、殴り合いの喧嘩や末っ子を水辺にぶん投げる下りなどはなかなかどうして爽快で楽しい。作中時点では既に故人である母親の人物像を四兄弟の会話や町の人々の言及で掘り下げていく構図も面白い。ヘンリー・ハサウェイによる映像も要所要所で印象深く、岩場の上から葬式を見下ろすデュークの登場シーンなどの絵面作りにグッと来る。あと60年代半ばということもあってか、正統派西部劇ながら“私刑的制裁へと向かう民衆”が簡素とはいえ描かれているのも興味深い。

亡き母親と四兄弟による家族ドラマや父親殺しの犯人を追うというサスペンスなどの特徴はあるものの、全体的には緩慢なテンポで進んでいく印象が強い。また展開に関してもカタルシスに欠けるので(川辺の銃撃戦は緊迫感があったとはいえ)終盤になるにつれて尻すぼみになっていく感は否めないし、ラストの決着も結局デューク単独での活躍になってしまったのが惜しい。凶悪な殺し屋に扮して存在感を発揮するジョージ・ケネディなんかも呆気なく片付けられてしまうので残念。それでもカットの秀逸さや母親を軸にした四兄弟の関係性など、味のある要素も少なくないので何だかんだ結構楽しめた。

デニス・ホッパーがそれなりの印象を持った脇役として登場しているけど、本作の撮影に参加した経験が『ラストムービー』のアイデアへと繋がっていることを考えると結構重要である。しかし若かりし日のホッパー、西部劇だとやたら“敵側だけど最終的に主人公寄りになって撃たれる若者”みたいな役柄やってる気がする。本作を始めとする西部劇で散見される“未熟で無鉄砲な青年キャラ”こそが『スパイクス・ギャング』など後々に出てくる無情青春西部劇の原型になるんだろうなあ。
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