バナバナ

ウォーク・ザ・ライン/君につづく道のバナバナのレビュー・感想・評価

3.5
アメリカのロックンロール界の大物の伝記映画。

このジョニー・キャッシュという人、子供の頃、父親との葛藤があったとはいえ、やっぱり次男気質というか、“その場凌ぎの人”という感じがしました。
普段家に居る時間が少ないので、電話から子供の泣き声が聞こえただけでイラっとするし、
それで奥さんが子供の方に気を取られて、自分の話を聞いてくれないと、すぐ拗ねる。
そして離婚の時には「子供は連れて行くな」って、あんた自分で子育てした事ないくせに、置いていかれても困るでしょうが!

対する腐れ縁を繰り返す、ジューン・カーターという女性、
子供の頃から家族でカントリー歌手としてデビューしていて既に有名人だったものの、親からは妹の方が歌が上手いと比較されて育った為、
否応なく、コメディエンヌ的な能力も身に着けたそうですが、
自分を道化に見せられる人って、他人の痛みも分かる賢い人だと思うので、グルーピーと浮名を流していたジョニーが、彼女に惹かれたのは納得しました。

ジョニーってこれだけジューンの事が好きなら、さっさと奥さんと分かれてきっちり決着つけなさいよ、と思いましたが、
南部の敬虔なキリスト教徒って、同じくカトリック教徒の国イタリアみたいに、離婚は相当高いハードルなのかな。
それにしては、ジューンの方は×2だったけど?

最近の日本は、不倫で男性側も叩かれる様になったけど、有名人同士だと、やっぱり女性の方が叩かれる割合が高い気がするので(ゲス事件を見てると)、何回もジューンの方から身を引こうとした気持ちも分かりました。
でも、ジューンの母親が、まだ薬物中毒が抜けない不安定なジョニーなのに、娘に「彼の傍に就いていてあげなさい」と言ったのには驚きました。
娘の気持ちを分かっていたからなのかな?

ジョニーの薬物スキャンダルって、コカインなどの麻薬系ではなくて、アンフェタミンなどの薬物系だったそうで、結局ジューンと再婚してからも、薬物依存は完全には治らなかったみたいですが、
彼がスキャンダルを起こしても復活できて、後に、国民的ドラマ『刑事コロンボ』の犯人役にオファーされる程の大物になったのは、
彼の書く歌詞が良かったからなのでしょうか?

ウィキを見ると、ホワイトハウスに招待された時も、弱者を揶揄する様な内容の歌は、決して歌わなかったそうなので、
ジョニーはロックンロール歌手らしいだらしないところはあっても、
彼の周囲の人や、世間一般のファンから愛される芯の様な物を、
ちゃんと持っていた人だったんでしょうね。

今作は、ジョニーが一途にジューンを追いかけるところがメインだったけれど、日本人の私は彼の偉大なところをまるで知らないので、ジョニーが時代が変わっても、どうして世間から受け入れられたのかが分かるエピソードを入れてくれたらよかったな、と思いました。
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