もるがな

アイデンティティーのもるがなのレビュー・感想・評価

アイデンティティー(2003年製作の映画)
4.5
事件は豪雨の夜に起こった。人身事故を起こしてしまった使用人と女優。人身事故の被害者である瀕死の女性と夫と息子の三人家族。車が動かなくなり立ち往生した売春婦。道路が水没し、引き返してきたラスベガス帰りのカップル。売春婦に異常に敵意を燃やすモーテルの管理人。そこに訪れた連続殺人犯を護送中の刑事。ワケありの男女10人が集まったモーテルで殺人事件が発生する。

クローズドサークルのミステリでありながら、サイコスリラーとスラッシャーの要素も加わった一級品の贅沢なサスペンスである。ミステリとしてはかなり大胆でありながら、伏線は素晴らしく、ミスリードもまた巧みである。反則ギリギリだとは思うが、序盤から提示される情報を読み解けば真相には辿り着けるため、むしろ大ぶりなネタを通すための細部のこだわりと、それを1時間30分で全て回収した脚本の上手さに感動してしまった。

ミステリやサイコスリラー、スラッシャー、ホラー、サスペンス。どのジャンルも観客の見たいものは別だが、その全てを狙いにいった豪胆さを買いたい。本格を期待するとアテが外れるが、推理とは単なる思いつきや想像ではなく、論理の積み重ねと伏線の読み解きである。単なる当てずっぽうだけでは楽しめず、全てに理由がちゃんと用意されているのがこの映画の素晴らしい部分である。メフィスト系のミステリや『かまいたちの夜』が好きな人は楽しめる映画だろう。
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