Melko

三文役者のMelkoのレビュー・感想・評価

三文役者(2000年製作の映画)
3.6
「泰ちゃん泰ちゃんて心安ぅぬかすな!ワテが殿山泰司の女房や!文句があるならオモテへ出たれぇ!」

「監督怒っとるやろなぁ…」
「この撮影中だけは、死なんといてほしいって言うてはった」
「あとは死んでもええから…この仕事だけは行きたいわぁ…」

ながーい間📎していた作品

酒飲みで女好き、人間としてなかなかのクズっぷり
酒のせいで度々仕事に支障はきたすし、方々に作った女を渡り歩いて寂しさを紛らわす
親としての自覚も乏しいようで
仕事仲間にしても、旦那にしても、父親にしても、触れるなキケンというか、近づいて仲良くなると苦労する臭がプンプンする
それでも、何人もの監督や役者に可愛がられて300を超す映画に出演し、住む場所があって生涯の伴侶も子供もいたということは、それだけ周りの人に恵まれていて、もっと言うと、そんな彼らに良く映る、人間としての魅力があった人なのかなぁと。

生い立ちは省かれ、キミエと上京してからの話と考えるとちょっと助長かなと思いつつ、合間に出演作の映像が挟まるので、退屈はしなかった。どれだけキミエに怒られても断酒できない清々しいほどのクズっぷりは見ててイライラするけども。
ものすごい端役にもまぁまぁ豪華なキャストが使われているので、画面的にも飽きない
大杉漣の関西弁は安心する
若い息子の若い嫁がめっちゃ菊池凛子に似てるなぁと思ったら、まさかの本人だった笑!菊池凛子ってもう42歳なのか
佐藤慶を演じた緋田康人の顔が佐藤慶に似過ぎててビビる

乙羽信子の関西弁も心地よい
対比すると竹中直人の関西弁はあまり…その代わりのアゲアゲテンションだったかな
殿山泰司自体を意識して見たことなかったので、モノマネは果たしてどこまで似てるのか何とも言えないけど、老人の形態模写流石というか、晩年ヨタヨタ歩きの後ろ姿は完全に70代の老人だった(竹中自身は撮影当時40代半ば)
対して内縁の妻(赤坂の側近)を演じた荻野目慶子はなかなか強烈な印象だった。突然のフルヌード、上も下も隠さず出てきて、体当たりがすごい!目が覚めた。
本作のMVPは間違いなく彼女である。

公開されたのが2000年、コメンタリーとして出てくる乙羽信子はそれより何年も前に亡くなってるハズなのだが…果たしてどうやって前もって撮ったんだ?!
泰司とちゃんと会話してるように見えるカットの繋ぎは上手い◎

終盤で出てきた監督が言ってた林間学校の坊さん、もしやと思ったらやはり「千羽づる」のあの坊さんだったか。多少呂律が怪しいところはあれど、あのセリフをスラスラ貫禄もって言えるのは、もはや三文役者でないのでは…と思う。

ホントに言ったのかは分からんけど、何気に、息子の結婚式で息子に行った
「親のことなんか気にかけんでええから、君たちだけの幸せを考えたらええねん。」っていうセリフが一番刺さったかも。
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