Melko

ガタカのMelkoのレビュー・感想・評価

ガタカ(1997年製作の映画)
4.0
”It's funny, you work so hard, you do everything you can to get away from a place, and when you finally get your chance to leave, you find a reason to stay.”

「2人とも死ぬぞ!」
「あの時と同じだ。戻ることは考えずに全力で泳いだ」

「ありがとう」
「こっちこそ感謝してる。体を貸す代わりに、夢をもらった」

なるほど。よくできたお話だなぁと思った。

自然に授かり生まれた子=神の子
先天的な疾患やハンデ、さらには推定寿命まで、生まれた直後に分かってしまう未来の世界
そうはならない、完璧な人間を目指して遺伝子レベルで調整され生まれてくる子供達

欠点や疾患が矯正されずに生まれた神の子は、あらゆる問題を矯正して生まれた子(適性者)には、敵わないのか……

メインとなる登場人物がなるべく少なめにおさえて作られているおかげで、私が苦手なSFサスペンスながら、お話に難なくついていけた。
加えて、お話の肝が神の子である不適正者ビンセントのことだけに絞られているので、展開も結末も納得がいく仕上がりだった。
ビンセントを演じたイーサン・ホークも、アイリーンを演じたユマ・サーマンも若い!!26年前だものね、そりゃそうか。

そんな、哀しげな瞳のビンセントが一生懸命運命に抗おうと頑張る姿(やってることは違法)を見て応援したくなり、そんな彼を静かに慕うアイリーンの横顔の美しさにキュンとなったり、顔面偏差値高めのカップルが一定の距離を保ちつつ静かにラブラブするシーンを見るのも良かったが、個人的なMVPはジェロームを演じたジュード・ロウ。
ビンセントに自分自信を提供した、適性者のジェローム。水泳で数々の好成績をおさめ、筋骨隆々で容姿端麗、まさに勝ち組なのに、事故で下半身付随に。そう、あらゆる欠点を直された適性者であっても、人生何が起こるかわからない。自分の人生は自分で生きなければならない。遺伝子が完璧だからといって、人生まで何不自由なく暮らせるとは、限らない。
きっと、絶望のどん底で何もかもを諦めかけていたであろう彼が、「動ける」不適正者ビンセントに見出した夢。
ビンセントとジェローム双方にとっての最大のピンチで、夢を完遂させるため体を張りまくって頑張ったジェローム。追い込まれて心が折れかけるビンセントにハッパをかける。
そんなジェロームが最後にとった行動。「世界一キライなあなたに」の富豪男性も、方法は違えど似たような行動取ってたけど、この心境はもう本人になってみないと分からないよな…きっと。

音楽もおさえて作られていて、お話の邪魔はしなかった。
しっとりとしたSFサスペンス、良きでした。己の限界を感じて何かに負けそうになった時に、見返したくなるかもしれない。
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