マヒロ

恐怖のメロディのマヒロのレビュー・感想・評価

恐怖のメロディ(1971年製作の映画)
3.5
軟派なラジオDJの男(クリント・イーストウッド)が、突然家に押しかけてきたファンの女性と出来心から一夜を共にしてしまったことから、地獄を見ることになる…というお話。

後の巨匠・イーストウッドの監督デビュー作は、ストーカー女に追われる自分を描くというえらいニッチな題材を扱っている。
同じ年にドン・シーゲルの『白い肌の異常な夜』に主演していて(シーゲル監督は今作にバーテン役でさり気なく出ている)、どちらも女をコマそうとしたら痛い目見るという作品で、何かプライベートでやらかしたんじゃないかとか考えてしまう。もしくはいずれこうなるんじゃないかという恐怖感からなのか。

なんといってもストーカー女・イブリンのキャラクターが凄まじくて、デレデレしてきたかと思えば次の一瞬で癇癪を起こしてみたり、邪魔するやつは容赦無く殺そうとしたりと、行動の先が読めない恐ろしさがある。
イカれているように見えて意外と外堀を埋めるように策を練って追い詰めようとしてきたりと、切れ者なのがまた怖い。家の中で対峙した際、闇雲に飛びかかってくるのではなく一撃加えたら闇の中に逃げ込んで反撃を交わすというヒットアンドアウェイ作戦で襲ってくるのが妙に冷静に見えて笑ってしまった。

後半、急に尺が余ったのか本命の彼女との大自然ラブシーンをやたらねっとりやってみたり、ジャズライブを観に行くという体で延々ジャズの演奏シーンを流してみたりと、「とりあえず好きなもの入れとくか」みたいななんとなく小慣れてない感じもして、微笑ましさもあった。

(2019.2)
マヒロ

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