コーカサス

断崖のコーカサスのレビュー・感想・評価

断崖(1941年製作の映画)
3.5
“白い疑惑”

富豪の娘リナ (フォンテーン)は、色男のジョニー (グラント)と熱烈な恋に落ち結婚するが、次第に「夫に殺されるのではないか」と不安と恐怖を抱き始める。

フランシス・アイルズの小説「レディに捧げる殺人物語」をヒッチコックが映画化した心理サスペンス・スリラー。

99分という短い尺の中で前半と中盤に時間を使いすぎた感があり、些かラストの伏線回収が雑に思えてならないが、美しきフォンテーン演じる新妻リナへの同情と、彼女と同じく我々を見事に不安がらせるテクニックは流石。

また特筆すべきは、“陰と陽、光と影”のコントラストを駆使した撮影だろう。
暗い階段を登るジョニーが持つ “光るミルク” は、その白さを際立たせるためコップの中に豆電球が仕込まれている。

これは雨をより激しく見せるために、雨の中に墨汁を混ぜて撮影を行った黒澤明監督の『七人の侍』の有名なシーンと同様に“モノクロ映画ならでは”の知恵と工夫が生んだ美しいショットとして、双方ともに今も映画史に残る名シーンだ。

66 2021