アニマル泉

マックス、モン・アムールのアニマル泉のレビュー・感想・評価

マックス、モン・アムール(1986年製作の映画)
4.5
大島渚が1980年代に「戦メリ」と本作の2作しか撮れなかったことは映画史の大きな損失である。「愛のコリーダ」以降エロスの極限を描いてきた大島が、遂に本作では人間とチンパンジーの恋愛を描いた。
唖然となる物語をプロデューサーがセルジュ・シルベルマン、脚本をジャン=クロード・カリエールというブニュエル映画の座組みでシュールに仕上げている。
「扉」の映画であり「檻」の映画だ。扉の開閉がルビッチのように律儀に反復され、そのたびに開けるととんでもない展開になる。檻はいつの間にかどちらが檻の中なのか判らなくなる。扉や檻という境界や仕切りが無効になっていく。
「食事」の映画だ。チンパンジーも人間もよく食べる。動物であるので生きる上でその差はない。
シャーロット・ランプリングが素晴らしい。ミステリアスな表情、堂々たるチンパンジーとのラブシーン。衝撃である。エロチックだ。晩餐会でマックスが色気づいて一同が気まずくなる場面がなんとも可笑しい。本作のヒロイン像はスクリューボール・コメディにもなりうる突き抜けたキャラクターなのだが、コメディではなく大真面目に人間とチンパンジーの恋愛というタブーに挑むのが大島流だ。
「音」が重要な映画である。鳴き声、銃声、電話、日常を切り裂くように突然得体の知れない音が響き渡る。何も知らない人達の不安と、訳ありなゆえにとても言えない側と、不条理な共存が可笑しい。
撮影はラウール・クタール。見事な色調、夜の雨、田舎への街道、クタールは瑞々しい。
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