FumiyaIwashina

わが母の記のFumiyaIwashinaのレビュー・感想・評価

わが母の記(2011年製作の映画)
3.8
作家の井上洪作と彼の妹、娘たちの視点から洪作の母八重をえがいた作品。八重は夫を亡くしてから、ぼけてきてしまい、同じことを何度も言ったり、徘徊したりと周囲を困らせてしまう。洪作には幼い頃、八重の祖父の妾に預けられた経験があり、母に捨てられた恨みと貴重な小説の題材という矛盾した感情を抱いている。
井上靖の自伝的小説が元になっているということで、1960年頃の雰囲気や大家族の賑やかさなど今にはない魅力と介護の問題や親子の関係性など今の時代も変わらないものとの両方の魅力がある。
それらを豪華なキャストと静岡東部や軽井沢というロケーションで美しい映像にまとめているため、地味ながらも満足感のある作品だった。
樹木希林はこの作品では前面に出ているわけではないけれども、ボケといやみの境界の曖昧さはさすがで少しおかしさもあった。宮崎あおい演じる琴子をはじめとした孫たちも皆優しくてうらやましい。そして、役所広司も洪作の複雑な感情や心の機微を表現していて、過去の真実を知るときのシーンはじわっとくる。