FumiyaIwashina

とんびのFumiyaIwashinaのレビュー・感想・評価

とんび(2022年製作の映画)
3.9
息子が物心つく前に母を亡くした父子の物語。運送業をしながら、男手ひとつで息子を育てる不器用で、無邪気な父と、時折、父とは衝突をしながらも、周囲の愛情を受けながら、まっすぐに育っていく息子。
すぐ頭に血が上ってしまう子どものような父親が、息子に対する気遣いをしたり、時には全力でぶつかる姿に胸を打たれる。
終盤に東京で一緒に暮らすことを提案する息子に対し、帰る場所を作るためという理由で断る父がとても素敵だった。地元を離れて暮らしている身としては、帰る場所があることのありがたみはとてもよくわかる。
周囲の登場人物も物語に華を添えており、居酒屋を営むたえ子や常に親子のことを気にかける照雲は特に存在感があった。息子の結婚にいまいち乗り気でない父に対する照雲の行動は最高だった。
大きな山場はなくとも、近所との繋がりが強い昭和の田舎での暮らしがとても温かかった。父自身も幼い頃に両親との別れを経験し、二人だけの家族ではあったが、父の幼馴染が本当の子どものように息子を可愛がるため、それほど、暗さや悲壮感はなかった。