yukihiro084

愛は静けさの中にのyukihiro084のレビュー・感想・評価

愛は静けさの中に(1986年製作の映画)
3.8
『耳の聞こえない子供が欲しい。』

当時21歳のマーリー・マトリン演じる
サラは言う。はっとした。(コーダ)で
娘に頑なな態度だった母親を思い出す。
コーダの彼女も自分と同じように耳の
聞こえない子供を望んでいなかったか。
同じ俳優による36年越しの伏線回収
みたいで、コーダの(母親になった)
マーリーにまた会いたくなった。

愛は静けさの中に。これも懐かしい。
WOWOW録画視聴。

マーリー・マトリン、瑞々しい。
学校の中で浮いてしまう、風変わりな
問題児から始まり、彼の好意を応えよう
とする女性に変わってゆく表情の変化、
喜びとか葛藤とか諦めとか、声の演技が
ない中での熱演、素晴らしかった。
この頃のウィリアム・ハート好きだった。
毎年、話題作に出てて、楽しみだった。
ウィリアム・ハート、もうこの世界に
いないんだな。(スモーク)の彼の
笑顔がとても好きだった。

聾唖学校を舞台に、型破りな教師と
聴覚障がいの女性の出会いの話。

ラブストーリーと言うより(領土問題)
のようだ。2人にはお互いの世界があり、
お互いの領域があり、使う言語も違う。
本当の愛かどうか不明だが、2人の恋は
順調にすぐに一緒に暮らし始める。

だが、映画を2人で見ても英語字幕が
出る訳でもない。楽器の演奏シーンも、
ちょっとしたボケや笑うタミイングも、
彼女には知ることが出来ない。
彼のために彼女も努力をする。
健常者の彼のために努力をする。

並行で描かれるのは、聾唖学校の
自分のクラスの生徒とのやりとりだ。
この授業のシーンも演じるウィリアムも
楽しくて好きなシーンだ。もっと
この授業と生徒たちのシーンが
観たかったなって思う。
彼は優秀な教師で、各地で実績を残し、
自信があったが、たった1人いつまでも
心を開かない生徒がいた。不思議な存在
だった。特にその生徒との間にドラマが
生まれる訳でもないのに、象徴的で、
印象に残るキャラクターだった。

今ならわかる。

主人公は、健常者の側の理屈でしか、
モノを言っていない。優秀な教師では
あったが、彼や彼女の声を時間をかけて
聞くことはなかった。皮肉だ。健常者ほど
(聞くこと)が出来ないなんて。

ウィリアム・ハート。改めて観ると
不思議な芝居だった。自分のセリフと、
手話で話すマーリーのセリフまで、
オウム返しのように、全て、観る側に
わかるよう翻訳するように話すのだ。
おまけに自分のセリフも手話をしながら、
セリフを言う。おいおいおい、高度な
芝居をしているじゃないか。と。
ウィリアム・ハートの凄さを実感。

海が見える小さな街。それも田舎町。
(マンチェスター・バイ・ザ・シー)も
(コーダ)も同様、今作でも、海は重要な
(登場人物)のひとりだよね。水面の
煌めき。行き交う船。朝や夕暮れの表情。
その静けさ。新しいドラマが始まる場所。
自分らしくいられる場所。喜びも悲しみ
も受け止めてくれる場所。
僕もあんな海辺に立つ小屋で
ハンバーガーを食べたい。

海辺から始まるだけで、あぁいいなぁ
って思っちゃう。そう言えば、
(サイダー・ハウス・ルール)観た時
思い出したけど、Netflixで大好きに
なった(ハーフ・オブ・イット)も
海じゃなく列車だった。列車も新しい
ドラマの始まりを象徴していて、
列車も、あぁいいなぁって思っちゃう
けどさぁ。

あと、ジャケット、こんなんじゃ
なかったけどな。ぶーぶー。
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