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遊星からの物体XのHKのレビュー・感想・評価

遊星からの物体X(1982年製作の映画)
4.5
ヴンッヴンッ・・・ヴンッヴンッ・・・(BGMのつもり)

エンニオ・モリコーネ追悼(その9)
公開当時、私はまだ学生で本作は“映画の日”にハシゴした映画の1本でした。
映画がもう始まったというのに後ろの席のよく喋るOLらしき二人組が、

「あ、オオカミが出てきた、カワイ~」
「え、オオカミ? あれ犬よ」
「えー! オオカミよ」
「違うよ、あれ犬だってば」
「エー! オオカミにきまってるじゃん」
「なに言ってんのー・・・」

などと喋り続け、いつまで続くのか不安でしたが、途中からは“ワッ”とか“ギャッ”とか“ヒッ”とかの断続音に変化。
エンドクレジットになると半分涙声で、

「もーなによこれ、気持ち悪いー」
「ホント、なんでこんなの見せられなきゃいけないわけー」
「そーよねー、最悪―」
「ホント、サイアク~」

などと言いながら二人が帰っていったのを今でも覚えています。
序盤では対立していた二人も帰り際にはなんと意見が一致して仲直り(?)
そのような効果があるとは、さすが名作『遊星からの物体X』。あなどれません。

もちろん、私もこの映画を観てすごいインパクトを受けました。ハシゴした他の映画が何だったのか思い出せないくらいです(いつもですが)。
血液検査のシーンは今観ても本当にもうカンベンのシチュエーションですね。
このバケモノだけは確実に息の根を止めてからエンディングを迎えてくれ・・・と当時の私はマジで思ったものです。

今回観て、今さらですが閉ざされた空間で犯人はこの中にいるとわかっていながら一人ずつ死んでいくのはA・クリスティの『そして誰もいなくなった』、このアメリカの南極観測隊のメンバーが12人で全員男というのは『12人の怒れる男』と共通点があることに気付きました(だからどうだと言うわけではないんですが・・・)。

本作はB級カルトの王様カーペンター作品らしからぬ堂々たるSFホラーの名作ですが、そのB級超えに貢献しているのがエンニオ・モリコーネの重厚な音楽です。
いつものようにカーペンター自ら音楽を担当してたらもっと軽い印象の映画になってたかもしれません。
カーペンターは自分の結婚式に『ウエスタン』のメインテーマを使うほどのモリコーネファンですから、この作品で組めて夢がかなったと喜んだんじゃないでしょうか。

本作のサントラLPもよく聴きましたが、本編では未使用だった曲も多く、タランティーノは『ヘイトフル・エイト』でちゃっかりここから数曲使ってます。
モリコーネは『エクソシスト2』や本作ではジャンルを選ばない幅広い才能を見せてくれました。
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