KANA

デリカテッセンのKANAのレビュー・感想・評価

デリカテッセン(1991年製作の映画)
3.4

『アメリ』で有名なジャン=ピエール・ジュネの長編デビュー作。

核戦争後の荒廃した近未来のパリ郊外。
ポツンと残る精肉店兼アパルトマンに、ある日求人広告を見た元ピエロの青年が住み込みで働くためにやって来る。
しかし、そこは牛や豚でなく人肉を売る不気味な精肉店だった・・

冒頭の退廃的な光景が大好き!
続いていろんなモノにレタリングされたオープニングクレジットのデザインがすごくお洒落。
ジャケットやあらすじからはスラッシャーっぽさも連想する。
でも観進めていくと、予想と違ってかなり漫画チックなドタバタコメディという印象。

肉屋の主人をはじめ、アパルトマンの住人たちのクセが強すぎ!
ピストン運動に合わせて各部屋の住人たちがそれぞれにリズムを刻むとか、アレとかアレとか、本筋に関係ないシュールギャグのオンパレード。
悪いけど、個人的にはそれらが全くといっていいほどツボにはまらずw

食肉にされかける青年と主人の娘とのロマンスの描き方もフランスのエスプリとは程遠く、どこか子供っぽい。御伽話のタッチ。

ただ、ディストピアの中のセピアがかった深い暖色で描かれる作り込まれた世界観はアートとして徹底しててすごくよかった。
もちろん『アメリ』にも通じるんだけど、騒々しいダークユーモアのテイストも含めるとクストリッツァの『アンダーグラウンド』と似てるなぁってぼんやり思ってた。
崩れ落ちそうな外観や地下室のデカダンスとか、クラシカル且つファンタスティックなルック。
鑑賞後調べたら、なんと美術担当が同じミリアン・クレカ・クリアコヴィッチという人だった!
やっぱりアートって言語を介さないところで脳にインプットされてるんだなぁ。
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