カルダモン

2001年宇宙の旅のカルダモンのレビュー・感想・評価

2001年宇宙の旅(1968年製作の映画)
5.0
これまで何度となく見てきた作品でありながら劇場で鑑賞するのは今回が初。公開から50周年の節目に初日初回の鑑賞。

場所は日本で唯一70mmフィルム上映が可能な国立フィルムアーカイブのスクリーンで、今回の『70㎜アンレストア版』上映は可能な限り68年公開当時のスタイルを再現させるというもの。
70㎜フィルム、6chサウンドに加えて当時の指示書に従った上映が行われ、一例を挙げると「前奏曲:2分53秒(カーテンは閉じたまま、照明はほの暗く。映画が始まる前に照明OFF、カーテンを開ける)」など事細かな指示がなされている。
入場時に配られたレジュメには今回の上映についての情報がまとめられており、これが案内として大変ありがたかった。

オープニング、照明が暗転してからの
『ツァラトゥストラはかく語りき』が鳴った瞬間にチビリそうになる程の鳥肌。フィルム映像特有の明滅や色調の豊かさに陶然となり、無音や呼吸音やノイズに畏怖した。
画面はいつも通りのよく知っている『2001年宇宙の旅』。しかし実際に鑑賞を終えた今、どの映画鑑賞とも似ていない不思議な感覚が体に残されている。初めて見たわけではないのに初めて見たような感覚といえばいいのか。見尽くしたと思っていてもまだまだ感動は眠っているもので、過去作をこういった形で再現させる意味を感じた。

スタンリー・キューブリック監督が張り巡らせた音と光の大いなる錯覚によって、劇場の時空が丸ごと変わる。そんなマジカルな体験こそ『2001年宇宙の旅』の魅力なんだと再認識しながら、50年の歳月を超えてもなお荒々しい鮮烈さを保っていることに驚愕する。

背景にある並々ならぬ尽力が繋がっていることを思うと感謝せずにはいられず、終演後に2階の映写技師に向けてスタンディングオベーションが起こったことは至極当然だった。
当時の上映スタイル丸ごと含めた映画体験は貴重だったし、技術継承の意味でも大変意義深いものだったに違いない。
一本の映画に対して考え直したり、見直したりすること自体が少なくなっているので、改めて映画を見ることについて考える豊かでとても素晴らしい時間体験だった。

本上映の詳細を参考までに↓
https://eiga.com/news/20180929/2/?cid=smartnews