ジェイコブ

用心棒のジェイコブのレビュー・感想・評価

用心棒(1961年製作の映画)
5.0
誰にも仕えず、風の向くまま気の向くままに旅をする浪人桑畑三十郎。桑畑が流れ着いた宿場町では、女郎屋の跡目争いがきっかけで生じたヤクザ者の争いで荒んでいた。桑畑は居酒屋の主人権爺の世話になりながら、巧みな剣捌きによって、ヤクザ者の親分清兵衛と丑寅を翻弄する。桑畑は共倒れによる町の掃除を計画し、物事は桑畑の思惑通りに進むと思われた。そんな矢先、丑寅の切れ者の弟卯之助が帰還する……。
巨匠黒澤明監督の時代劇。黒澤映画でお馴染みの三船敏郎主演で、東野英治郎、仲代達矢が脇を固めた代表作の一つである。
大胆で無骨ながら、情に厚い桑畑、口は悪いが人情もろい権爺、その他脇役では乱暴だがお調子者の亥之助など、脇役含め登場人物のキャラクターが絶妙なさじ加減で描かれている。亥之助も味方にいたら、確実に人気が出そうなうっかり八兵衛のような愛嬌すら感じた笑。
東野英治郎と西村晃という初代と二代目の水戸黄門が共演してるのも面白い。端役で初代弥七の中谷一郎がいたのもまた感慨深いが笑。
本作はハリウッドにも多大なる影響を与え、セルジオ・レオーネの「荒野の用心棒」のもとになったり、ジョナサン・ノーランの「ウェストワールド」や「パーソンオブインタレスト」でも、「浪人」という言葉が出てくる。
本作で描いている事も、貧しさや争いへの憎しみ、力のある人間によって虐げられる弱者の姿である。特筆すべきは、強い立場にあると思われた丑寅の子分が、親分に安銭で働かされている事に不満を洩らしていたり、不要になったらお払い箱になった点だろう。黒澤明は戦争を経験し、使い捨てにされるのはいつも末端の人間達である事をその目で見てきた。戦争は終わったものの、世の中には変わらず存在し続ける不条理に対する怒りをこの映画に込めたのかもしれない。