maverick

ドラゴンボール 魔神城のねむり姫のmaverickのレビュー・感想・評価

3.6
1987年に公開された、アニメ『ドラゴンボール』の劇場版第2作。夏休み東映まんがまつりの1本として上映された。上映時間は45分。


鳥山明先生を偲び、追悼鑑賞。

数ある劇場版の中で、自分が唯一鑑賞漏れしていたのが本作。初期の頃の作品で味わい深い。ちょうど悟空とクリリンが武天老師に弟子入りする頃の話。ブルマ、ウーロン、ヤムチャ、プーアルが主要メンバーで、わちゃわちゃした関係性が微笑ましい。ランチさんも出て来る。いかにも東映まんがまつりなシンプルな作品性だが、結構おどろおどろしい描写で子供は怖いのではないだろうか。鳥山明好きとしては、敵の造形に目を奪われる。赤い怪物のガステルなんてドラクエに出て来るモンスターそのもの。ピッコロ大魔王の部下に通じる部分があって趣深い。話としては特段面白味はないが、初期のドラゴンボールらしさに溢れていて感じ入ってしまった。演出としては粗さも目立つが、これが味でもある。懐かしくて思わず涙が出そうになった。

悟空の無邪気さ、クリリンのしたたかさ、亀仙人のスケベさ。それぞれのキャラが立っていて何とも愛おしい。ブルマもめちゃくちゃ可愛くて、ドラゴンボールの正統ヒロインはやっぱり彼女だなと再認識。初期の頃のブルマの可愛さって突き抜けてて、これは鳥山先生の力によるものなんだよね。健康的な色気に満ちていてとっても魅力的。作品の初期の人気って、ブルマのおかげといっても過言ではない。アニメでの鶴ひろみさんの声も好きだった。

鳥山明先生は日本が世界に誇る偉大な漫画家。自分にとっても特別な存在で、大きな影響を受けた人だった。一番好きな漫画で子供の頃は絵を模写しまくり、憧れて漫画家になろうと思ったほど。その頃買った画集は家宝として実家に大切に保管してある。アニメにも当然ハマり、グッズもたくさん買った。ドラゴンボール好きな人は周りにもたくさんいて、談義をすればいつも盛り上がった。小学生の時に好きな女の子が悟飯のファンで、その子の気を引きたくて悟飯のカードを当ててはあげていたなぁ。そんな風に自分の青春はドラゴンボールと共にあった。今でもちょこちょこ漫画を読み返すほどに大好き。だから今、胸にぽっかりと穴が開いて自分の一部を失った気分。多くのファンがそうであるように、喪失感が半端ない。これからもまだまだ作品を生み出してくれると思っていた。早すぎるよ、鳥山先生・・。


ドラゴンボールは本編の神がかり的な面白さに比べ、劇場版はその多くが出来がイマイチ。本作も原作エピソードにちょいと手を加えた程度の内容だ。だが、これも紛れもなく鳥山ワールドの作品性。彼が生み出したキャラクターが動き回り、コミカルで愛らしい世界観に満ちている。今となってはそれが何とも愛おしい。漫画やアニメに夢中になり、ノートにたくさん絵を書いていた頃の自分を思い出して感慨深くもなった。当時に本作を劇場で鑑賞した子供たちは、きっと目を輝かせて喜びに酔いしれたことだと思う。鳥山明という人の偉大さを改めて知る。わくわくする世界を作り出す天才であった。
maverick

maverick