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栄光のランナー 1936ベルリンのskm818のレビュー・感想・評価

4.2
ベルリン五輪の金メダリスト、ジェシー・オーエンスを描くと同時に、当時のオリンピックを取り巻く状況や人種差別の様子を描いている。米国ではナチに対する反対表明としてオリンピックに参加すべきではないという声が結構あったらしいんだが、その米国も黒人にはまだ公民権がなくバスの座席も別だしホテルは通用口から入れなど人種差別がひどい。オリンピック委員会の誰かが参加反対派に対して嫌味っぽく言ってたが、ナチのこと言えるのかという。コーチのラリーはその辺偏見が少ない人として描かれていたが、彼も当時の白人なので、人種なんか関係ないとか平気で言っちゃったりする。ナチと談合している委員の人も、とりあえず差別的な光景をなんとかすればOKとか、頭沸いてるのかと思うが、こういう人今でもいそうだよな。
確かに選手にとっては選手生命は短いのだから大会には出たいだろうし、メダルを取ることでナチの鼻を明かしてやるというのもひとつの抵抗ではある。個人の判断をどうとか言えないよな(言えるほど自分は偉いのかと思う)。許し難いのは選手にその手の判断や良心的葛藤を迫る政治的状況だわさ。
ベルリン五輪は第二次大戦より数年前だが、ナチがユダヤ人やロマや有色人種を迫害差別してるということはすでに知れ渡っていたらしい。そしてそういう状況を恥だと思うドイツ人もいたということもちらっと描かれている。ロング選手いいやつやんか。リーフェンシュタールについても、ナチの宣伝に協力しつつも、それを超えてひとりの映像作家としていいものを撮りたかったのだという観点で描かれている。こういう描き方は賛否の分かれるところだろうけど、実際のところどうだったのかな。
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