Melko

若草物語のMelkoのレビュー・感想・評価

若草物語(1994年製作の映画)
3.7
「現実の人生のことを書くべきでは?魂の声を聞いて。」

「なぜみんな去ってゆくの?私はうちが大好き。でもあとに残るのは嫌い。今度は私が去る番ね。」

子供の頃に絵本で何度も何度も読んだお話(原作小説は未読)
出征した父に代わり、女だけで家を守るマーチ家の物語。焦点が当たる四姉妹、ずっと見たかった1994年度版を初鑑賞。
キャストの演技はすごく良いなと思ったけど、お話に入り込めなかった。今までの改編で設定や展開が細かく変わっているところも多々あるので、これまでに出ているバージョンはどれも原作通りではなさそうだけど、結局はお話終盤の違和感が拭えなかったのが大きい。それは、
私の中では今までただの好青年だったローリーの、マーチ家(特にジョー)に対する気持ち悪いとも取れるほどの執着や、プライドは高いのに些細なことで自尊心が揺らぎまくって見てられないジョーの情緒、そして昔も今も嫌いなキャラである末っ子エイミーの悪魔的な振る舞いと鼻につく強かさ。
よく言えばとても人間臭く生き生きとしていて、悪く言えば身内にいると付き合うのがしんどいタイプの人間がギュッと詰まっていて、あれ?このお話ってこんなに見るのしんどい題材だったっけ…と。
でも思い返すと、マーチ四姉妹を精神的に土台から支える母親の影が思ったよりも薄かったのが原因かもしれない。出てきて欲しいところで母親がいないので、締まってない感じがしてしまう。

その代わりというか、昔も今も私のお気に入りのキャラである、三女ベスのエピソードが泣かせる。(作品によって結末は違うらしい)
他の3人に隠れて影は薄いが、やると決めたらやる強い自我と意思を持ち、優しさと思いやりの塊で、マーチ家の良心。
傷ついた者の側には必ずベスがいる。
彼女の危篤に飛んで帰った次女ジョーとのやり取りはホントに胸にくる。元々身体がそんなに強くなかった彼女は、外へ出て行った姉妹たちを寂しく思いつつも、各々の活躍に励まされていた。自分が見れない世界やできない経験を、姉妹を通して知ることで勇気をもらえていたのだと思う。
そう想いを馳せられるぐらい、ジョーとベスの会話は静かで穏やかな迫力があった。
演じたウィノナ・ライダーとクレア・デインズはベストアクトだと思う。
ベスの宝箱を開けたら、みんなで作ったマーチ家新聞とか手紙がいっぱい入ってて、ホントに家族のこと大好きなんだなって分かるのがまた泣ける。

この2人だけでなく、
しっかり者で堅実な長女メグ、お転婆で生意気な四女エイミー、それぞれ入れ替わりはあり得ないなと思えるぐらいに、あてがわれたキャストが見た目も演技もピッタリだったのがすごかった。みんな、マーチ家の四姉妹が降りてきてるかのような。

主人公がジョーなので、どうしてもジョーが中心となり、他の姉妹のエピソードが若干薄くなってしまうのは仕方ないけど、それでもなるべく多くの時間を割いて均等にしようとしてた感は伝わった。

機会があれば他の年代の若草物語も見てみたい。
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