田島史也

真夜中の虹の田島史也のレビュー・感想・評価

真夜中の虹(1988年製作の映画)
3.5
隠蔽の魔術師、カウリスマキ。


パラダイスの夕暮れと同様、タバコが映像の軸となる。また、子供と夫婦を分かつ扉も登場。そして、最初は必ず仕事の様子から。その時一切のセリフは排される。これらは、カウリスマキの作品(とりわけ労働三部作)の一貫したモードであると言えるのかもしれない。

肝心なところは隠蔽する。セックスも死体も、刺激的で、観客の関心があるものは決して映さない。映さないことで、観客をコントロールしている。こうして意図的に作り上げられた暗示が、細部に散りばめられ、物語に奥行きをもたらす。語ることでしか伝えられない小説には決して成し得ない、映像による隠蔽。それが本作では特に顕著なものとして表れていた。

車カッケェ。

お金強奪されても平然としていたことに驚き。

教会宿泊所、そんなのあるのか。

刑務作業で指輪作って渡してるのいいな。 

子供が健気で可愛い。可哀想なほどに健気。

6500マルカが75000マルカに笑
詐欺られすぎてて笑った。

所々笑える要素があるのがポイント。マッティ・ペロンパーが当然の如く面会についていこうとして、看守に雑に止められるシーンとか。

終わり方がとにかく綺麗。船名Arielを象徴的に映し出し、タイトルの回収をしただけでなく、旅の始まりと物語の終わりを華麗に重ね合わせた。彼らにとってその瞬間は、それまでの人生の終わりであり、これからの人生の始まりなのである。そんな転換点をラストシーンに据え、その事実を象徴的に示す船名を、確信犯的にタイトルに選ぶ。この辺りの感性と構成力は驚くべきものである。


映像0.8,音声0.7,ストーリー0.8,俳優0.7,その他0.5
田島史也

田島史也