あんがすざろっく

ワールド・オブ・ライズのあんがすざろっくのレビュー・感想・評価

ワールド・オブ・ライズ(2008年製作の映画)
4.2
リドリー・スコット作品をレビューしようシリーズ。

あれ、これってトニー・スコットじゃなかったの⁉️的な作品。

トニー・スコットは、リドスコの実弟で、「トップガン」や「デイズ・オブ・サンダー」などで有名な監督です。

リドリーもトニーも、どちらも映像派として知られていますが、リドリーが闇の映像美を描くことに長けている一方、トニーはカット割やスピーディな演出を得意とし、正にMTVの波に乗った監督と言えます。


どっしりと腰を落ち着け、映像の奥行きに拘るイメージのリドリー御大ですが、本作ではカメラがよく動き回る。
あまりの目まぐるしさに、人物関係に混乱しそうになります。
まるで、トニーの演出が乗り移ったよう。

CIAの話、現地に潜入するエージェントと、本部にいる上司を描いた映画と言えば、ロバート・レッドフォードとブラッド・ピットの「スパイ・ゲーム(2001)」がありますが、こちらはそのトニー・スコットの監督作でした。

トニーは2012年に自ら命を絶っていますが、本作の公開は2008年なので、まだ存命だったはず。
仲は悪くないご兄弟だったはずなので、もしかしたら御大は、弟と何かしら話をしていたのかも知れないですね。



ヨルダンに潜入しているCIAのエージェント、フェリスは、大規模なテロ組織の跡を追っていた。情報は逐一フェリスの上司にして、CIA本部のホフマンに報告され、フェリスは彼の指示を受けて動いている。
現地の情報局と信頼関係を築きながら捜査を進めたいフェリスだが、手早く大きな進捗を手に入れたいホフマンにより、幾度となく横槍を入れられる。
フェリスの協力者、果てはフェリス自身の命さえも危険に晒され、ホフマンへの憤りは日に日に増していく…。


現地で常に危険と隣り合わせで生きているフェリスを、レオナルド・ディカプリオが精悍に演じています。
ホフマンからの命令と、職務をこなしながらも己の正義を自問自答する日々に神経をすり減らし、しかしながら中東に身を置いたからこそ分かる人々の姿に、フェリスは気持ちが動いていきます。
現地の女性との間に生まれるロマンスが、フェリスのささくれ立った心を解きほぐしていくのがいいですね。

対する上司のホフマンを演じるのが、ラッセル・クロウ。
まぁこのホフマンの狡猾なこと。
フェリスさえも欺き、人を駒のように動かすことしか考えていない。
ひいては「アメリカを守る為」なんて言葉に帰結するんでしょうが、自国の利の為なら、他国の人間の命など、何とも思っていない。
体重を20キロ増やし、たるんだ体型で挑んだクロウが、汚れ仕事には決して自分では手をつけない嫌味な役柄を表現しています。

汗水流し、現実の世界で生きているフェリスと、家族サービスや優雅なひと時を過ごしながらも、非情な命令をいとも簡単に口にするホフマンの対比。
こんな上司に、何故フェリスは付いているんですかね。


ヨルダン情報局のハニに、マーク・ストロング。「キングスマン」の印象と大分違いますね。
信用していいのか、裏切ればどんなに危険な
人物か、ヒリヒリするような雰囲気を漂わせ、サスペンスを盛り立てます。

何とオスカー・アイザックも出演している😳


ちゃんと見ていないと、置いていかれそうな設定ですが、「動」のリドリー・スコットを見ることができ、ディカプリオもカッコイイ(そしてクロウが憎たらしい)アクションドラマです。


"遠くの親戚より近くの他人"

そんな諺が頭に浮かびました。




2008年12月 有楽町 丸の内ピカデリーにて
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