円柱野郎

椿三十郎の円柱野郎のネタバレレビュー・内容・結末

椿三十郎(2007年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

説明不要のあの傑作を、リメイクしようなんてのはすごく勇気の要ることだとは思う。
黒澤作品に手を付けて下手なモノを撮れば叩かれるのは目に見えてるからね。

森田監督はそこでオリジナル脚本をそのままにして撮り直したわけだけど、それは間違いではなかったと思う。
所々、今観ると不自然と思えなくもなかった場面が数カット無くなってはいたものの、基本的にオリジナルに忠実な話運びはオリジナルのファンとしても安心感があったし、構図まで似せて撮っているところにも監督のリスペクトを感じました。
まあ、馬草小屋のシーンや寺田邸のシーンでは、「そこはパンフォーカスで撮ってくれ!」と思うところはあったけどねw

織田裕二の三十郎は、明らかに三船敏郎のモノとは別物。
いや、役者としてどうこうではなくキャラクターの解釈が違うのだろうけど、“剣の達人”というイメージは薄まっていた。
多勢と戦って一人で勝ってしまうのだから達人には違いないけど、でも疲れを見せる織田の三十郎は“やっとこさ勝った”感がして凄みは薄れるかなあ。
もともとオーラだけで人が殺せそうな三船の三十郎には織田裕二のイメージでは勝てないから、人間の三十郎を表現したのだろうけど…、まあ仕方ないか。

その流れのまま、「椿三十郎」の代名詞である決闘シーンはオリジナルの展開。
これは個人的には好きじゃない。
やはり一瞬で決めて欲しかった。
森田監督が敢えてこの一番有名なシーンを変えてきたのだから、明らかに演出家としての信念あってのこととは思うし、これはこれの良さがあるのも分かるけども、でも達人・室戸をも超越している三十郎の姿が見たかった気がするのだ。

色々書いたけども、制作が決まった時に感じた不安は杞憂に終わりました。
神格化されたオリジナル「椿三十郎」にはとうてい勝てない。
でもこれはこれで、ひとつのオマージュ作品としてありなのではないかと納得できる出来ではありました。


押し入れ侍役の佐々木蔵之介は良い演技でしたね。
コメディリリーフとしてのキャラクターを完璧にこなしてましたw
円柱野郎

円柱野郎