円柱野郎

落下の解剖学の円柱野郎のネタバレレビュー・内容・結末

落下の解剖学(2023年製作の映画)
3.5

このレビューはネタバレを含みます

フランスの山荘で起きた1人の男の転落死。
その妻・サンドラが殺人の容疑で裁判にかけられる。

サスペンスかと思ったら普通に裁判モノ、しかし心理的にはサスペンスだった。
ラストで裁判は結審するし、サンドラは無罪にもなる。
でも最後まで観て残るモヤモヤは、結局核心部分が藪の中だったからだろう。
劇中で描かれるピースだけを見れば、殺人が行われていても不思議ではないのだから。
しかしサンドラが殺したのか否かというのは、この作品にとってのマクガフィンでしかない気がする。
描いているのは殺人の裁判だけれど、見せたいものは"ある夫婦の関係性"なんだろうな。
そういう意味では、次第に浮き彫りになるサンドラの人間性と夫婦関係という見せ方には工夫を感じさせるものがあったし、主演のザンドラ・ヒュラーの演技もとても良かった。
ドイツ語を母国語としながらも基本的に英語で話し、さらには慣れないフランス語で裁判に挑むという彼女のキャラクター設定にも、一筋縄ではいかない複数の「面」を感じさせるところですね。

ドラマ的には目を引く部分はあるものの、派手さはあんまりない印象。
一番感情がむき出しになったのは終盤の夫婦の口論の録音だろうか。
でもそれも派手さとは違うしなあ。
ともかく、地に足付いた描き方で、ある程度観客に感情を委ねてしまうような映画だった様に思います。
円柱野郎

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