ジェイコブ

転校生のジェイコブのレビュー・感想・評価

転校生(1982年製作の映画)
4.0
尾道の中学に通う斉藤一夫は、明るいクラスの人気者。ある日、一夫のクラスに幼なじみの斉藤一美が転校してくる。転校初日にも関わらず、馴れ馴れしく話しかけてくる一美にたじたじな一夫だったが、階段から落ちそうになる一美を助けようとして一緒に落ちてしまい、身体が入れ替わってしまう。戸惑う一夫のもとに、追い打ちをかけるかの如く、父から横浜への転校の知らせが入る……。
大林宣彦監督の青春映画。若き日の尾美としのりと小林聡美のW主演で、二人の初々しい演技が可愛らしい。人格が入れ替わってしまった中学生の男女が、思春期特有の悩みや男女の違いによる苦しみに苦しみながら、男と女という壁を乗り越えて一人の人間として大切な事を学んでいく。
生理の苦しみやブラジャーの付け方などに苦戦する一夫、男友達との付き合い、男の生理現象に恥じらう一美の姿が面白く、本作の見所の一つだろう。
男女の入れ替わりというテーマは、「君の名は」や現在放送中のドラマ「あのときキスしておけば」でも取り上げられるほど、年代を超えて好まれている題材であると言える。本作の特徴として、二人が入れ替わる前の映像は気持ち暗めの白黒、入れ替わった後をカラー、二人が元通りになった後を明るめの白黒にするなど、色彩に明確な変化をつけていることだ。これは今まで男の世界、強いては尾道という狭い世界で生きてきた一夫が、一美と入れ替わった事で女性の気持ちと広い世界を知り、前よりも広い視野を持って新たな土地へと旅立つ事ができたという、一夫の成長を色彩という形で可視化している。
未成年飲酒や小林聡美の裸がモロに出たりと、昔ならではの演出も見受けられるが、思春期の子の成長を描く作品の中でも、広く勧めたい作品の一つ。