広島カップ

激突!の広島カップのレビュー・感想・評価

激突!(1971年製作の映画)
5.0
スピルバーグのスの字も知らなかった11歳か12歳の頃、ある夜日曜洋画劇場でバッタリ出会ってしまった本作。
自宅のSONYトリニトロン14inhTVで観ていた当時劇場未公開作品だった本作は、一緒に観ていた映画大好きの父親も知らなかった作品。
劇場公開用に編集されて日本の銀幕に登場したのは確か『ジョーズ』が大ヒットしスピルバーグの名が世の中に認知された後ではなかったかと記憶しています。
アメリカの荒地を走るハイウェイを舞台に、巻層雲が拡がる爽やかな青空の下で展開される一級サスペンス。映画初心者の少年には天地が引っくり返るくらい強烈な怖さでした。

暗闇に潜む訳でもなく、変装をする訳でもなく、銃やナイフをかざす訳でもなく、血がドバドバ出るでもなく、美女の悲鳴が響く訳でもなく、日常の隙間に存在して、そして殺す為の納得のいく理由がある訳でも無い正体の知れない不気味なトラック運転手に追われる一介のサラリーマン(デニス・ウェーバー)。
当時一家で楽しみにその14inhTVで観ていた人気TVドラマ『刑事コロンボ』が終了してしまい、後釜として放映された『警部マクロード』がちっとも面白くなかったことで覚えていたデニスは、本作では只々追い詰められる男がシックリ来ていてナイスな配役でした。ラストの西に傾く日差しの中、崖の上で小躍りする彼の姿は図らずも彼の出演作品のベストショットではないかと思います。

追いかけられるサラリーマンが警察に通報するために逃げ込んだ電話ボックスの土埃で汚れたガラスに映り込んでいた、白っぽいシャツを着て髭の無い弱冠24歳のスピルバーグ。
偶然なのか意図したものなのか?当然ヒッチコックが過ぎります。
そのガラスの彼に対して私を映画好きにしてくれてありがとうと言いたい感謝の一本です。

昨今のジョン・ウイリアムズの音楽&ヤヌス・カミンスキーのカメラに飽きた人にもお勧めの天才スピルバーグのシャープ&タイトなデビュー作。
サスペンス好きの方にはマストの一本だと思います。
広島カップ

広島カップ