山本

JSAの山本のレビュー・感想・評価

JSA(2000年製作の映画)
4.3
韓国映画強化週間に見た中でいちばん良かった。38度線を警備する韓国兵と北朝鮮兵が仲良くなり、真夜中に酒飲んだりして遊ぶんだが、ある日その場を北朝鮮側の上司に見つかってしまう。取り乱した韓国側兵士が銃撃を行い、北朝鮮側兵士2名が死亡。物語はその殺人事件の真相をイ・ヨンエ演じる韓国系スイス人の主人公が調査するというかたちで進行する。

審判の場でソン・ガンホ演じる北朝鮮兵士が「祖国万歳!」と叫ぶところがすごかった。自分はあくまで北を愛する兵士だということを見せることによって、南の兵士と繋がってないことを示そうとするシーン。つまり演技でやってるわけだけども、迫真の演技なんですよね、あれが……いや、「迫真の演技」の演技か。イ・ビョンホン演じる韓国兵のことを「傀儡軍のクソ野郎が!」みたいに罵るんですが、そうして敵対することによって相手を守ってるんですよね。だってもし敵である北朝鮮側と仲良くしてたっていうことがバレたら処刑じゃないですか。だから真実を隠すためにソンガンホ演じる兵士は必死に演じてるわけです、愛国兵士を。

イ・ヨンエは捜査の中で真実に気づいちゃうんですね。現場に残った弾痕の数と銃の装填数の違いとかで。それでイ・ビョンホンが真実を語ろうとするんだけど、それを察知したソンガンホがキレてさっきのシーンにつながるわけです。結局審判の場はうやむやになってしまいイ・ビョンホンも自殺して事件は闇に葬り去られるという、なんとも悲しい結末。すべての真実を明かそうとするイ・ヨンエと、敵国の友人を守るために嘘をつくソンガンホ。この対立ですよね。悲しい、悲しい物語だ……こんな映画を現実の社会をもとにフィクションとしてつくることができる韓国はすごいなと思った。そしてそれはとりもなおさず、韓国の置かれている政治状況がフィクションかと思うほどに歪であることを示してもいる。だから我々日本人が見るとびっくりしますよね。映画はこうやって現実を切り取ることができるんだ、と。

北朝鮮のチョコパイ不味い問題って数年前にネットで見た記憶があるけど、この映画が公開された頃からあった話なんだね。
山本

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