けんたろう

砂の器のけんたろうのレビュー・感想・評価

砂の器(1974年製作の映画)
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丹波哲郎の旅行記。


主人公が殺人事件を追ふ者なのに、テエマとされるのは殺人事件の背景。最後は主人公がたゞのナレエタアと成つて、事件の真相や背景などをペラペラ話す。此の手のミステリイ映画を観ると、何時も萎えてしまふ。本作で云へば、最後の最後に親子の旅路に就いて語らるゝ訳けだが、然し暴論を云ふと、此れでは主人公の存在意義が然程無く感ぜらる。もう此の親子の旅路だけで好いんではとさへ感ぜらる。
まあ、観客が主人公を、主人公が事件を追ふ構造に依りて、何時のまにか観客の見てゐるものが、主人公から、主人公の見てゐるものへと移行させられるのは面白いんだけれども。

何んや彼んや云ひはしたが、然し事件を追ふ刑事の旅行や、東北弁及びカメダを巡る捜査は矢張り面白く、又た此の描かれた時代の雰囲気も大へん唆るもので、エンタアテイメントとして秀逸な一本であつた。