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007/消されたライセンスのefnのレビュー・感想・評価

007/消されたライセンス(1989年製作の映画)
3.8
 シリーズ初の私怨で動くボンド。盟友フェリックスの復讐を誓い、殺しのライセンスを失ってもなお身体を張る姿には今までにない緊張感がある。応援に駆けつけるQやカジノでのカードを使った駆け引き、大邸宅の謎のオブジェや宗教施設に隠匿された麻薬工場等ボンドらしい見せ場も多い。
 前作リビングデイライツの無個性にコネリー、ムーア時代の原型を落とし込むことで娯楽としてより進化している。ステロタイプであることは時には罪だが、ジャンルとしてボンドをこういう形で活かしたことは英断だったと思う。いまさら叶うことはないが、この延長でジョングレンの作品をもう一作くらいは観てみたかった。
 ただ完璧かというと疑問点も多い。いくら盟友の仇討ちとはいえアメリカ/メキシコというイギリスに何ら関係のない事件に首を突っ込んでまで解決することではないだろうし、そも麻薬王というのが役不足。権利の問題で当時は登場することはできなかったがスペクターか、それに匹敵する組織を設定すればまだ納得がいっただろう。
 ボンド映画としての進歩、ロバートデヴィの何をやらかすかわからない、おどろおどろしい演技、鮫の拷問、減圧機を使った人間破裂、ジャンル映画としては十分な条件が揃っているのに設定だけが抜けている。そこだけがただただ残念な映画だった。
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