ぴよまろ

バルトの楽園(がくえん)のぴよまろのレビュー・感想・評価

バルトの楽園(がくえん)(2006年製作の映画)
2.2
第一次世界大戦中、日本の捕虜収容所を舞台に、捕虜に人道的かつ寛容に接した収容所所長と、捕虜となったドイツ兵、地元の人々との交流を描いた、事実をもとにした作品。

敵兵とはいえ、祖国のために命がけで戦ったドイツ兵に対して敬意を表し、軍上層部から非難されても、当時として考えられないほど厚遇に扱い、それに感動したドイツ兵たちが収容所を去るときに所長に対する感謝として、日本で初めて「第九」を演奏した、という事実が素晴らしいものの、ではそれを作品内で十分伝え、映画として面白いかというと、正直疑問でした。

ドイツ兵たちが収容所内で楽しく暮らしている姿や、地元住民たちとの交流している姿、そして最後の第九のシーンはとても良かったのですが、全体的に演出やカメラワークが2006年の作品にしては古すぎ、わざとらしすぎと感じました。また、主人公の松江所長(松平健)があまりに完全無欠の正義の人なので、物語としてのメリハリをあまり感じられませんでした。主人公は所長ではなくて所長の部下か、若いドイツ兵の人の方が視点が定まってみやすかったかな、と思います。

所長がドイツ兵に寛大な理由が、自身が会津出身で、戊辰戦争時の明治政府の惨劇を知っているから、というのは面白い(というか事実らしいですが)のですが、やはりここも会津のシーンがわざとらしすぎでした。せっかくのいい素材なので、グロいくらいリアルに描いてくれれば、と思うともったいないです。

第一次大戦中の、日本のちょっといい話、としてみるぐらいには面白いと思いますが、映画としてはあまり面白くみることはできませんでした。
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