ウサミ

ソーシャル・ネットワークのウサミのレビュー・感想・評価

ソーシャル・ネットワーク(2010年製作の映画)
4.5
ここまで「才能の世界」の孤独を見事に描いた作品は初めて観ました。

大谷翔平は、類稀なる才能と天性の体格を活かし、それを最大限発揮すべく、前人未踏の「二刀流」の世界へ飛び込みました。
あれだけの才能と身体を持ちながら、彼に平凡な人生を送る道は無かったと思います。
才能の世界で、新たな挑戦をし、孤独に戦う道しか用意されていなかった。

マークザッカーバーグは天才であり、情報社会の発展を大きく推し進めた第一人者の一人でしょう。
彼は、大切なものを見誤り、成功と財産の代わりに多くの物を失ってしまった。
彼の人間性は欠如しているし、どっからどう見てもイヤなヤツ。
まるで「天才と変人は紙一重」というような、ぶっ飛んだ人間像は、カリスマ性をかんじました。

しかし、この映画は、あくまで彼を神格化せず、一人の「青年」として描いているように感じました。
偏屈で、オタクで、根暗で、しかし、不器用で、平凡な青年。
ただ、「才能」に選ばれてしまった故に、孤独になってしまった。なるしか道は無かった。

ドラマの中でアンドリューガーフィールド演じるエドゥアルドの苦悩や葛藤を描くことで、より一層マークの孤独な世界が浮かび上がってくる構造を感じ、鳥肌が立ちました。
マークには、素敵な彼女と、優秀な友人とともに手を取り、成功者の道を歩くシナリオは用意されていません。
天才として、世界を牽引し、歴史に名を残し、「巨大カジキ」を釣り上げ、才能の世界で孤独に生きる道。それを走るしか無かった。

ジャスティンティンバーレイク演じるショーンの存在も素晴らしい。
マークと観客の心を剥がす役割といえるでしょうか。

ラスト、マークの目に映る世界はどんな色をしていたのだろう?

「天才と変人は紙一重」というのはきっと本当なんだろうな。
下手すると「こういうクソ野郎じゃないと経営者としては成功しない」みたいな、めちゃくちゃ面白くないメッセージ性の映画に留まってしまいそうなところを、マークザッカーバーグの人間レベルでのレイヤーで描き、その孤独を感じさせてくれる素晴らしい映像体験でした。

まぁ、彼がその後孤独に生きたかどうかは知りませんが。(笑)
ウサミ

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