むぎたそ

最高殊勲夫人のむぎたそのレビュー・感想・評価

最高殊勲夫人(1959年製作の映画)
-
ポップ。
日本人の結婚観の歴史が実感としてわかって興味深い。どのくらいデフォルメされてるかわからないけど。
いかにも少女マンガで、若尾文子はいかにも魅力的でキュート。やっぱり声がいいし、なんかこういうボーイッシュだったり飾り気なかったり庶民的でたくましい役がいいよね。
最初からちゃんちゃらおかしすぎる姉の最後の口上(けっこう長い)もよくわかるっていうかさ。社会構造上、裕福でない女性は、いい仕事を持つ男性との結婚が最も安心して生きてく道だったんだな、とわかるし。納得感がある。
男性も男性で(いわゆる会社員としての)仕事の成功が結婚と密接に結びついていたことがよくわかったな。
あと、若い人しか価値がないような描写は世知辛いというかせつないよね。
まあ高度経済成長で世界に日本製品を輸出しようとしてたなら社長夫人の姉がたくらむ「世界征服」という言葉もまんざら冗談でもないのかもなと思ったり。
まあ当時の一部の丸の内のエリート大企業の話でしょうけどね。当時の一般的な話ではないだろうけど。

「女の一番の幸せは結婚」は時代の共通認識なんだけど、同じ結婚をテーマにした映画でも、今見てて(娘、というか女をモノ扱いしてる)小津映画は古いしキモいってなるけど今作は楽しいってなるから、やっぱり一緒くたに昔のは見れない!とはならないなあ、とは思った。監督によって、全然違う!

お父さんが、「娘は娘、私は私」って何回も言うのもいいしね。あまりにも何回も出てくるから、けっこう作品的に重要なメッセージかと思った。結婚は、娘自身の意思で決める。

会社の脇役たちもだいぶよかったわ。ただのモブじゃない!魅力的。京子さんに言い寄る同僚社員たちも、会社でいい結婚相手を見つけることに奮闘するBG(ビジネスガール)たちもね。
結婚第一でなくフジコさんみたいな選択(アメリカに行く)をする女性を描くことも、とても多様性があっていいと思うし。(まあフジコさんはかなり裕福だからそれができるわけですが。)

やんちゃな悪ガキ風の川口浩って、いつも同じ感じの演技だけど、けっこう好きだなあ。
だいぶじらしたあとに、ダンスホールで、お互いの声が聞こえなくて、「小さくて聞こえないわよ」「(大きな声で)好きで好きでしかたないんだよぉ!」「わたしも好きなの…!」「え?聞こえないよ」「(大きい声で)大好きよ!」この演出、だいぶイイ!
ラストのギャって顔とウインクの顔のポップな結婚写真が出たまんま、若尾文子の語りが続いて、終ってのもだいぶセンスいいしね。

源氏鶏太原作映画は割と愉快で好きかもだ。

増村も久しぶりに観た。若生増村コンビのもっと観たい。
むぎたそ

むぎたそ