しゅん

浪華悲歌のしゅんのレビュー・感想・評価

浪華悲歌(1936年製作の映画)
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下町の様子を斜め上から撮るカットと、直後の家の軒先を映すカットの画が相似形を成す冒頭からカッコいいが、不適な表情を浮かべる山田五十鈴がカメラに接近してくるラストは最強にカッコ良かった。
山田の登場シーンも素晴らしい。電話交換手として受話器を持って話をする横顔が硝子に映り、画面右上には美しい花々の入った瓶がある。ところが、次に同じ構図のカットが映される時には花が映っていない。金銭と男の性欲に弄ばれ、可憐さを奪われる彼女の行く末を暗示しているのだろう。

溝口の文藝ものに比べると力強くしたたかなヒロインだが、純真さとは裏腹に汚れた獣として見なされ、やがてその汚れを内在化していく姿は同質だ。ただ、溝口監督の作品ごとではなく、女優ごとの性質の違いはある気がする。香川京子は美しく死ねるが、田中絹代はどこまでも生き恥を晒す、とかそんな感じで。

それにしても、本作や『夜の女たち』、あるいは清水宏の『簪』、石田民三の『花つみ日記』といった戦中〜戦後初期の傑作邦画が70分程度の長さであることを考えると、何故映画上映時間のスタンダードが70分より長くなっていったのかと不思議に思う。今挙げた作品全て、短いなんて一切感じないのにな。