ドイツ軍の空襲で逃げ延びた死刑囚。
隣で爆死したフランス人兵士の制服と身分証を盗み、軍曹として本当に手柄を立てていく。
名が知れ渡れば知人が現れ、正体が判明するのも時間の問題。
拭い去れない殺人の前科を、心を入れ替えて潔い散り際で精算する。
良くも悪くも、戦時中らしさとジャン・ギャバンらしさが際立つ作品。

アメリカ映画。しかし監督はフランス人のデュヴィヴィエ、主役は同じくフランス人のジャンギャバン。彼らは母国で「我等の仲間」「望郷」など幾つか素晴らしい映画を作った名コンビであるが、世界大戦の悪化でこの頃はアメリカに亡命していた。この映画はその頃に作られた作品。なのでジャンギャバン以外の役者は全てアメリカ人らしい。

物語の舞台はフランス。死刑判決を受けた男が空襲のドサクサで逃げ出して、あるフランス兵の身分証と制服を盗む。死刑囚はその兵士になりすまし、アフリカへ。逃亡するタイミングを逃し、軍役に就くことになるが、男は活躍してどんどん階級を上げていく。しかしやがて男の正体はバレてしまうが、これまでの活躍が認められて階級を剥奪されるも、軍役は続行。最後まで男は活躍した。

まあ典型的な戦意高揚映画やな。2020年に生きる平和ボケした日本人の若造が観ても多少の興奮と満足感はあったから、当時の軍国少年はえげつない興奮をしたと思う。

フランス人の話やのに、全員英語を話すところはまあご愛嬌やな。当時のアメリカ映画は字幕なし吹き替えなしのこのスタイルが当たり前でしたから。ジャンギャバンの英語が流暢だったことに驚き。さすがにジャンギャバンだけは吹き替えだと思うが、正直アフレコか分からないくらい自然だった。

予算は少なかったと思います(多分)。限られたセットを活かし、省略と見せ場を分けるのがやっぱり上手やなと思った。ほいでええタイミングで国歌やらマーチやらが流れて、否が応でもワクワクさせられる。


このように映画は国家の戦争に利用されたというめちゃくちゃ黒い歴史がある。当然日本でもこの類いの映画はあった。黒澤明も撮っている。小津は意地でも撮らなかったが。21世紀もだいぶ過ぎた現在、ジワジワとプロパガンダ映画製作が進められようとしている。悲しいけど事実。映画界は今どこも金がなくて、国からの助成金がないと大作を撮るのは難しい場合がある。監督もスタッフも飯食うためには映画撮って稼がなあかん、せやからそういう映画を本望じゃなくても受ける人がおる。そしてそれは東宝など大きな映画館で、名の知れた役者が演じて上映される。

映画っていうのは大きな画面に2時間釘付けにされるからどんな内容でも観終わった後は誰でも多少の影響は受ける。言葉悪いけど洗脳と変わらん効果が映画にはある。国家がそれを利用したらもうおしまいです。芸術は常に国や政治から干渉されない位置で自由に表現されるべきやのに、それができない。そして僕らはその行われていることに気づかない。みんな気を付けてください。特に戦争映画や国家賛美の匂いのする映画は裏になんかあるんちゃうかと疑って。ネットで調べたらなんか出てくるはずやから。そもそも今日日作る戦争もの映画に美談なんて要らんねん。殺戮・残虐・死体・拷問・差別・飢餓・独裁とかそういうのを見せてくれたらいい。それなら戦争なんて阿呆らしいからやらんとこうとなる。これ以上戦争を美化するな。全ては愚かな過ちだ。確実に大日本帝国はナチスと同類の最低国家だった。そんな国の英雄崇拝は懲り懲りですわ。有名な俳優や監督が作った作品だからといって受け入れたらあかん。特攻隊は美化したらあかん恥ずべき行いやし原発も将来的に無くさなあかん。誰も気づかないところで砂糖に包まれた爆弾が作られていることに僕らは早く気づいてそういうのを排除しないといけない。自由のために。芸術の未来のために。ああ、俺は何を書いてるんやろう。まあでもこのまま投稿しますわ。チャオ。

デュヴィヴィエ、アメリカ時代最後の作品。ダンケルク撤退を経て、ペタンがラジオで休戦協定を放送すれば、英国で亡命政府を立ち上げたド･ゴールが徹底抗戦を呼び掛けるといった困難な戦況下での話。こんな激動の時に飄々と立ち回るジャン･ギャバンが魅力的ではある