チッコーネ

黒水仙のチッコーネのレビュー・感想・評価

黒水仙(1946年製作の映画)
4.0
中盤まで「ゆれる尼僧物語」程度と見せかけておいて、クライマックスはほとんどホラー…、こんなに変な映画なら、もっと早く観ておくべきだった!さすが『血を吸うカメラ』のマイケル・パウエル作品。

キャスリーン・バイロン扮するシスター・ルースへの演出には、明らかに「悪魔憑き」の状態が意識されており、映画的には『尼僧ヨアンナ』より15年早い問題作。
またインドの住民たちが「表向きでは王の気まぐれに従いながら、内心では一切信仰に傾いていない」という描写も、非常にシニカルだった。
冒頭の老シスターが必要以上に意地悪そうなのが引っ掛かっていたのだが、結末は実質的な敗退宣言。物語の意図は明白で、欧州人のキリスト教に対する複雑な愛憎が感じられる。

「絶壁にある修道院」が舞台のため、セットの窓から見える風景がややチープな場面も。
しかし鐘突き堂と断崖との境界は、絵として巧妙に成立しており、思わず仕掛けが知りたくなった。