広島カップ

ポセイドン・アドベンチャーの広島カップのレビュー・感想・評価

5.0
船内の豪華ラウンジで大晦日のカウントダウンが行われている天地無用の豪華客船ポセイドン号。
そこに公開当時の日本人が皆さほど現実味を持って恐ろしいとは思ってはいなかった津波が襲い、ひっくり返った船の中で脱出の道を探る人々というストーリー。

公開当時、私はまだ小学生で叔母に連れられて日比谷の今は無き東京有楽座によそ行きなんか着せられて行きました。本当は叔母が観たかったところに多少私への教育的配慮が加わったものと思われます。
大人社会へ慣れさせてやろうという有り難い配慮。
今にして思えば大変々々有り難い配慮でした。
映画ってこんなに面白いものなのかと生まれて初めて思いました。

約半世紀の時を超えて今回なんと当時以来二度目の鑑賞です。
何度も観ていてもよさそうな作品ですが自分自身でもビックリです。おかげで新鮮な心持ちで観れました。

「パニック映画はこう作る」という先例がない中でこのクオリティ。
こんなに人間を描けたパニック映画はない。
後進のパニック映画群と比較しても奇跡的です。
パニックシーンばっかり撮ってちゃダメだなんだよ!って本作はフロントランナーとして既に言っていました。
ロナルド・ニーム監督の作品は後にも先にも私はこれ一本きりなのですが"人"に関して興味が深い人なのだなあと思います。

本作は出演役者にも必ず触れておかなければなりません。
『フレンチ・コネクション』(1971)で鮮烈な印象を残した若きジーン・ハックマン。本作では生きる力溢れる異端神父を演じていて強烈です。
「神様、私達が生きる邪魔をしないで下さい」とでも言わんばかりの生きる為のパワー。
このパワーはドイル刑事にも通じていてハックマンの役者生命としての中心に置かれている物だと思います。
本作で同じく刑事役を演じていたアーネスト・ボーグナイン。毛深くぶっとい二の腕とギョロ目でもって「こいつ牧師のくせして生意気な野郎だ」とハックマンと大声で言い争いするシーンは迫力がありました。
おデブなシェリー・ウインタースの良い人ぶりに引きずられるように脱出行を共にする人達の中には弱い人はいるが悪人がいない。
子供から老人、男も女もいますが白人だけというのは少し気に入らない。今なら黒人もアジア人も混在したチームになっていたかもしれませんね。

大晦日から元日にかけて起きた大惨事の話。
暖かい部屋で紅白観ながらビールを飲んでいるであろう今夜の我が身を思うとありがたいなあと感じます。笑

皆さま良いお年をお迎え下さいませ。
来年もどうぞ宜しくお願い致します。
広島カップ

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