LalaーMukuーMerry

博士の愛した数式のLalaーMukuーMerryのレビュー・感想・評価

博士の愛した数式(2005年製作の映画)
4.2
良い作品でした。何より数学そのものがテーマという特異な内容が衝撃でした。eiπ=-1 ということは一応理系なので知ってはいたが、この式を eiπ+1=0 と書き換えて美しい!と感じるようになったのはこの映画のおかげ。確かに!
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普通の人にはちょっと難しい数学、それに取り組む数学者という人、とても恐れ多くて近寄りがたいイメージをハードル上げずに身近に感じられるようにしてくれたのは、博士と家政婦と√ (ルート)くんのキャラクターのおかげ。友愛数というのも良かった。 
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数学というのは不思議な学問だ。数は人が考えたものなのに、数の間に潜む法則(定理)は自然の中に備わっていたとしか思えない。数学者はそれを発見するのだ、決して作るのではない。発明には特許権が与えられるが、発見には与えられない。だから数学の定理には特許はない。数学の定理は人類に計り知れない貢献をしていることを考えると、数学は実に潔い。(物理や化学はお金まみれだ)
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物理を昔学んだ身としては、経済学に出て来る数式の粗雑さには呆れたものです。それに比べれば物理の法則は普遍的で厳密で美しい。だけど物理の基本法則も永遠に真実というわけにはいかない。ニュートン力学も電磁気学も相対性理論によって修正をうけた。科学が進歩すると理論も進化するのだ。だが数学の定理は一度正しいことが証明されると、それは永遠に正しい。決して修正を受けることはない(ピタゴラスの定理が修正を受けることはこれからも決して起こらない)。
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最近「フェルマーの最終定理」という本を読んだのですが、これが実に面白かった。この定理の証明に多くの著名な数学者が取り組み、なんと350年もかかって20世紀の終わり頃、ようやく証明できたという内容でした(もちろん実話)
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これを読み終えたら、数学つながりで昔一度見たこの作品のことを思い出したので、そのレビューついでに数学の問題をつけておきます。一応私なりに作った問題ですので、よろしければお読みください。フェルマーの最終定理の原点でもある、ピタゴラスの定理に関係した問題です。
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Q1: ピタゴラスの定理 a2+b2=c2  は直角三角形の3つの辺a, b, c の長さの間に成り立つ式ですが、a, b, cを整数と限る時には、この式を満たす整数の三つ組は限られます(これをピタゴラス数といいます)。a=3, b=4, c=5 はこのような三つ組の中の最も簡単な例ですが、これとは別のピタゴラス数の三つ組みを一つ挙げなさい。
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A1: (別の三つ組を挙げられた人は、計算が得意か、粘り強い人と思います) 実は、問題の解は無数にあるのですが、ここでは一般的な求め方をお伝えしましょう。
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・まず1つの奇数を思い浮かべてください、これをkとします(一桁の小さな数の方が暗算しやすいです)。
・kの2乗を計算し、k・k=2n+1 となるような n を求めます。nはkの2乗から1を引いて、2で割った値です(n=(k・k-1)/2)
・そうすると、(k、n、n+1)が三つ組になります。
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奇数kを5とすると、k・k=25、n=12となるので、(5, 12 13)が三つ組です。検算してみると、 5x5=25、12x12=144、 13x13=169、 25+144=169、確かに成り立ちます。
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この方法で求められるピタゴラス数の3つ組(k、n、n+1)を小さい方から書き下すと次のようになります。
(3, 4, 5)、(5, 12, 13)、(7, 24, 25)、(9, 40, 41)、(11, 60, 61)、(13, 84, 85)、・・・
すべての奇数kについて三つ組は求められるので、整数解は無限にあることになります。
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Q2: 何故上記のような簡単な方法でピタゴラス数は求められるのでしょうか?
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A2: 「すべての奇数は、連続する整数の平方数の差として表される」という性質があるからです。

n   1  2  3  4  5   6  7  8  9  10   11  12  13 …
2乗 1  4 9 16 25 36 49 64 81 100  121 144 169 …
差   3  5  7  9  11 13  15 17 19  21  23  25
k         3x3                  5x5

上のように書き下して納得してもよいですし(ちょっと神秘的な気がしませんか?)、次のように代数的に理解しても良いです。
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連続する二つの整数をn、n+1とすると、その平方数の差は必ず奇数になる
 (n+1)・(n+1)-n・n=2n+1 ・・・(1)
そして奇数の中には、9や25のように、それ自身が平方数になっているような奇数がある
 2n+1=k・k  ・・・(2)
(2)を(1)に代入すると、
 (n+1)・(n+1)=k・k+n・n
これは、ピタゴラスの定理に他ならない。したがってA1の方法で求めた(k、n、n+1)の三つ組はピタゴラスの定理を満たす整数解となる。