<転落しても高貴である女性像を描く、溝口の女性賛歌>
まるで坂道を転げ落ちるかのように、身を持ち崩していく哀れな主人公だが、どんなに汚され、下げすまされようと自尊心は失わない、そんな女性像を溝口は高貴な女性として賛美している。
このとき田中は43歳、十代から老年まで見事に演じ切っている。
ワンシーン・ワンカットの長回しや流麗なカメラワーク、格調高い映像美と浄瑠璃を用いた伝統音楽が作品をより高貴なものにしている。
画質、音質ともに粗いことが惜しまれる。
溝口の作品に「近松物語」があるが、共通するのが物語の面白さ。
近松のヒロインは健気だが、西鶴のそれはしたたかである。