Azuという名のブシェミ夫人

シャネル&ストラヴィンスキーのAzuという名のブシェミ夫人のレビュー・感想・評価

3.5
ココ・シャネルとイゴール・ストラヴィンスキーの不倫を描いた作品だけど、その周囲・背景も史実に基づいて描かれていて興味深かった。
1913年パリ、ストラヴィンスキー作曲による新作バレエ『春の祭典』が上演される。
これが革新的な内容で、当時としては物凄くセンセーショナルなものだったわけで、事実初演の日は嘲笑と怒号または称賛の声とで大騒動となったそう。
そのシーンが冒頭でいきなり再現されるのだけど、なかなかの迫力で当時の混乱ぶりが見れて、それだけでも一見の価値あり。

オープニングからラストまで、シャネルの愛した黒と白のコントラストが美しい。
家や調度品、彼女のファッションはもちろん、画面の中の表現がとても洗練されていて、映画全体が“ライン”にこだわった素敵な作品。
アンナ・ムグラリスは、CHANELの香水アリュールのモデルもやっていたし、痩せ型で気品があり、自立した女シャネル役にぴったり。
特徴的なハスキーボイスがとてもセクシー。
そして、ストラヴィンスキー役マッツ・ミケルセンがまた、才能に溢れながらも神経質で繊細な男を好演していて素敵♡
私は彼の喋らない時に醸し出す演技がとても好き。
ピアノ演奏が当て振りだけれど、手の動きはワンショットで彼が演じていて驚き。
メイキングを見たら独特な勉強法を自分で編み出したようで、天才か・・・。

二人の間に生まれたもの。
それは愛と言うより欲望、才能を突き動かすアドレナリンのようなものであったように思う。
抑えようにも衝動的に湧きあがる二人の“発想”のような欲情が、ベッドシーン以外のところの方に良く出てる。
才能ある芸術家同士でこそのものなんでしょう。
でもやっぱり奥さんと子供が不憫でならないから、不倫はダメだよー。
映画全体の雰囲気は良いけど、ただラスト間際にちょっと要らない演出があったのがマイナス。

シャネルを描いた作品は他にも幾つかあるので、これを機会に観てみようっと。