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夏の嵐のメルのレビュー・感想・評価

夏の嵐(1954年製作の映画)
3.9
ルキノ・ビスコンティの比較的初期にあたる、初カラー作品。
舞台は1866年のヴェネチア。

小国分裂の時代から漸くイタリア王国として一つに統一された後もヴェネチアはオーストリアの占領地になっていて、いたる所にオーストリア軍兵士が居た。

伯爵夫人のリヴィアは自分の従兄弟がイタリア独立運動の中心メンバーであるにもかかわらず、彼の敵対しているオーストリア軍の将校に惹かれてしまう。

「一度たりとも軽率な行動をした事がない」と自負する人妻がひとたび恋に落ちたら…それはもう大変、周りが全く見えないのです。

しかし若い将校は女たらしで有名な男、あっという間に現実に目覚める伯爵夫人だったが一度燃え上がった恋の炎は中々消えなかった。

前半は在り来たりなストーリーだが後半からエンディングにかけては衝撃的。
戦争などには興味がないと言っていた将校も自業自得とは言え、ある意味戦争によって人生を狂わされた人間の1人なのかも知れない。

衣装から調度品まで細部にこだわるビスコンティ監督、オープニングのオペラの場面をはじめ、ヴェネチアの街並み、石畳、田舎の風景、その中の伯爵夫人のドレス姿…全てが絵画の様に美しい。

それについて監督は「歴史的に正確なヴィジョンを、人間の生き方を、ある世界に置かれた人間たちの行動を、正しく示す事こそその内容をはっきりとしたものにするのだ。細部に力を入れるということは私にとっては避けがたい論理的な結果なのだ」と述べたとか。

伯爵夫人はヒッチコックの「パラダイン夫人の恋」や「第三の男」のアリダ・ヴァリ、若さは少し消えかかっているけれど魅力的です。
マーラー将校は同じくヒッチコックの「見知らぬ乗客」でテニス選手だったファーリー・グレンジャー。
ビスコンティ監督の選ぶ男優はアラン・ドロンをはじめ皆確かに美しいです。

今作で伯爵夫人の執事役の女優は後の「山猫」では公爵夫人を演じていますね、可愛い顔立ちが印象的でした。
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