カルダモン

トゥルーマン・ショーのカルダモンのレビュー・感想・評価

トゥルーマン・ショー(1998年製作の映画)
4.8
ジム・キャリーが演じていなければ、ここまでの哀れみもなかっただろうし、抑圧を跳ね返す笑顔もない。

某映画のレビューで目にすることの多かった本作。私も真っ先にこの映画をイメージしたのだけど、この作品を挙げること自体がネタバレになりそうで書けなかった。改めて見返してみるとリメイクと呼んでも良いのではというくらいにここからの引用が多くて驚いたし、やっぱり面白い。

だれもが作り物のドラマに飽きている時代に生放送のリアルな感動や衝撃。しかしそれすらコントロールされた作り物に過ぎないというアイロニー。生まれた時から27年、毎日24時間、全世界に生活のすべてを晒されているトゥルーマンの人生。唯一そのことを知らない本人をよそに、彼のナマの反応を鑑賞している全世界の視聴者たち。幾重にも皮肉が織り込まれていて、愕然としながらも解放されるこの喜びを受け止めるべきだろうと思いとどまる。最後の最後、次の番組にチャンネルを変えようとする視聴者に打ち砕かれそうにもなるが、肯定しなければやってられない。籠の中で育っていても閉じ込めることはできない精神。トゥルーマンは文字通り荒波を乗り越え突破する。

いまや実生活を動画配信で切り売りするような時代。自ら進んで自分をプロデュースして晒してる。なにがリアルなのかあやふやになる感覚。いつかトゥルーマンのように目が覚め、その先にある壁を自ら発見し、閉じた世界から外に出られるのだろうか。閉じた世界こそがリアルなのか。