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無防備都市のgenarowlandsのレビュー・感想・評価

無防備都市(1945年製作の映画)
4.2
ロッセリーニによるネオレアリズモの代表作と言われる由縁がわかる。戦後(イタリアは1944年に解放)直ぐに、主要な人物のみ役者で一般人を起用し、まだ戦争の傷痕が生々しいなか、オールロケで撮影。市民を装ったレジスタンスの活動家たちとゲシュタポの攻防が描かれている。日常に入り込んだ(同性愛の)女スパイたち。レジスタンス同士の合言葉は口笛。司祭がレジスタンスの要になっており、ゲシュタポの目をうまく交わしている。水面下で親に隠れてレジスタンス活動する子供達。適切な表現かわからないが「生き生きと」抵抗する市民が描かれている。

ネオレアリズモの作品を数本観たが、ひたすら悲惨な暮らしが映し出され、運命に抗うことのできない受け身で、救いのなさが延々と描かれる。シンプルな構図に、権力や慣習、制度への怒りと、不幸な人びとへの憐れみが沸き上がる。社会変革を目的として作られたのだと理解していた。

本家本元の本作を観て、ロッセリーニは酷い現状を描きながらも、娯楽映画として、その時代の人びとの共感を得るように、日常の喜びや希望も織り込んでいた。恋愛も、コメディタッチも含み、さらにゲシュタポ全てを悪者にはしていない。

他のネオレアリズモの登場人物はたいていが一般市民だからもあるが、みな運命に翻弄される愚かな人物像でしかなかったが、本作は役者の演技力もあり、意思の強い、生き抜く力を見せてくれる。人を通して感動を得られた。

ネオレアリズモについて、様々な解釈があるだろうが、地に根付いたその土地の市民の起用でリアルな画が作られるのは事実だが、だからといって徹底して悲惨さだけを描くことに、私は抵抗があった。市民は(人間は)そんなに愚かでも受け身でもない。悲壮さをドキュメンタリーのように演じたフィクションでしかない。かえってリアルから離れていく。

本作ではもっと現実的で、市民の情感が反映されていた。それもそのはずで、実在の人物3人のエピソードが組み合わされたものだったから。


📖時代背景

イタリアが降伏したとたんにドイツがイタリア全土を占領。連合国とは休戦し、ローマは軍事力を持たない無防備都市宣言をしたのに、ドイツが作った傀儡イタリアが再び連合国と戦い、ローマの無防備都市宣言は無効化され連合軍による爆撃を受けていた。
そんな戦況の最中のローマを描いている。
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